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 プロダクト企業からDX企業へ転換すべく、全社変革プロジェクトに取り組む富士通。JTC(Japanese Traditional Company:日本の伝統的企業)である同社は、いかに時代の変化を成長の機会と捉え、生まれ変わろうとしているのか。本稿では、『CROの流儀』(大西俊介著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。CRO(最高収益責任者)が企業変革で果たすべき役割と、その舞台裏に迫る。

 富士通は、業種別から機能別への組織再編を行い、併せてグローバル顧客専門の組織を新設した。非効率な縦割り構造を解消するという「難題」をいかに乗り越えたのか?

全社DXプロジェクトの目的と組織改革

CROの流儀』(日経BP)

 時田が2020年1月からスタートした「全社DXプロジェクト」は以下のようなコンセプトと組織改革を掲げました。

●富士通自身のDX企業への変革および制度やプロセスの抜本的見直しを加速

●グローバルコーポレート部門を廃止し、コーポレート各機能は社長が直接管轄する

●営業とSEが同じ目標を共有し、一体となって顧客のグローバルなDXを推進するため、サービス軸で営業部門とテクノロジーソリューション部門を再編し、「グローバルソリューション部門」を新設する

●日本市場に特化した公共、地域、社会インフラ、特機部門については、富士通マーケティング(現・富士通Japan)を含む「Japanリージョン」として組成し、日本市場での圧倒的なビジネスの拡大を図る

●海外5リージョンは、「海外リージョン」として統一的なガバナンスを徹底する

●プラットフォームビジネスに関する経営判断を機動的に行うため、サービスプラットフォームビジネスグループを社長直轄のシステムプラットフォームビジネス部門とする

 国内のIT産業の構造そのものが、孫受け、ひ孫受けといった多重下請け構造からいまだに脱しきれていません。富士通はある意味、その総本山的なポジションでもあり、細分化・多段階化したグループ会社構成、会社内でも階層化され組織が極端な縦割り構造になっていました。