Ferrari SF90 Stradale

アプルーブドフェラーリをテスト

 今回はフェラーリ・アカデミーを訪問するだけでなく、フェラーリ・アプルーブドのサンプルにも試乗できた。試乗したモデルはV8ツインターボエンジン+プラグインハイブリッドでシステム出力が1000psに達するハイブリッド4WDのSF90ストラダーレ、新開発のV6ツインターボエンジンにプラグインハイブリッドを組み合わせることで軽快な走りを実現した後輪駆動の296GTB、そして優雅なスタイリングで人気を呼んだローマの3台である。

Ferrari 296 GTB

 このうち、フィオラノ・サーキットでステアリングを握ったSF90ストラダーレと296GTBは、新車時とまるで変わらないしっかりとした印象を伝えつつ、SF90ストラダーレは圧倒的なパワー感と抜群のスタビリティ感を、そして296GTBは速さではSF90ストラダーレに及ばないものの後輪駆動らしい軽快な走りを披露し、キャラクターの違いをしっかりと感じさせてくれた。

Ferrari SF90 Stradale

 残るローマは公道で試乗したが、こちらは新車時と変わらないしっかり感を残していただけでなく、驚くべきことにデビュー当時よりもしなやかな乗り心地で私を魅了した。おそらくは年次改良が入った結果だろうが、こうしたモデルイヤーごとの細かな違いが楽しめるのもフェラーリ・アプルーブドの魅力のひとつといっていいだろう。

あなたが好きだったフェラーリもきっとどこかで生きている

 それにしても、フェラーリ・アプルーブドというシステムを構築し、交換部品を作り続けるには膨大なコストが必要となるはず。にもかかわらず、彼らがここまでして「歳月を重ねたフェラーリ」のサポートに尽力しているのは、なぜなのか。

 ひとつには、フェラーリが愛情と自信を持って1台1台の製品を作り上げていることが挙げられる。だからこそ、ユーザーが永遠にフェラーリを愛用することを願っているのだ。

 ちなみに、フェラーリは1947年の設立以来、これまでに28万台以上のスポーツカーを世に送り出してきたが、驚くべきことに、そのうちの90%以上がいまも存在しているという。

 こうした残存率の高さは、オーナーが自ら所有する“跳ね馬”に深い愛情を注いでいることを示すと同時に、フェラーリが作り上げたスポーツカーの耐久性や信頼性が傑出して高いことを物語っている。

 そして、もしも1台1台のフェラーリが永遠ともいえる生命を授かっているのであれば、購入後の取り引きでも高い価値を維持することができる。つまり、これは良好なリセールバリューを実現するにも役立つ活動なのだ。こうすることで製品の価値を高め、ひいてはブランドバリューの向上にも結びつける。フェラーリ・アプルーブドやフェラーリ・クラシケといった活動の源にはこうした思いがあるはずだが、それにしても、販売後の製品にこれだけの労力とコストを投じることができるフェラーリは、やはり特別な存在というしかないだろう。