
創業150年を超える三菱マテリアルは、2021年から、重厚長大の製造業に根強く残る年次管理からの脱却を実現すべく、HRX(人事変革)に着手。パフォーマンスマネジメントを徹底させるなど、「個」を生かす人的資本経営に取り組んでいる。
学習院大学の守島基博教授がモデレーターとなり、三菱マテリアルの個を生かす人的資本経営の実現に向けたHRXの施策について、同社執行役常務CHRO、野川真木子氏に切り込んだ。
組織変革、デジタル変革、業務効率化と同時に進めた人事変革
守島基博氏(以下、守島) 最近、JTC(Japanese Traditional Company=伝統的な日本企業)といったことがよく言われます。歴史が長い大企業では組織運営が硬直化し、変わることが難しいとやゆされることもあります。
そうした中で、三菱マテリアルは、近年、人事変革に取り組み、成果を挙げています。そもそも、人事変革に取り組む背景には何があったのでしょうか。
野川真木子(以下、野川) きっかけは、2017年に起きた三菱マテリアルの品質問題です。これを機に、組織の在り方を抜本的に見直すこととなりました。
2018年をガバナンス元年として、問題を洗い出し、ありたい組織の姿について議論を重ね、改革を進めていきました。
特に創業150周年である2021年には、4つの経営改革として、「CX(Corporate Transformation、組織改革)」「DX(Digital Transformation、デジタル変革)」「HRX(Human Resources Transformation、人事変革)」「業務効率化」を打ち出しました。これが人事変革の始まりといえます。
守島 かなり大掛かりな経営改革ですが、その4つが柱となったのはなぜでしょう。
野川 ガバナンスの在り方を見直す中で「目指す組織・風土」を再定義しました。これが4つの改革の原点となっています。
「目指す組織・風土」の定義には複数の要素が含まれ、例えば「自由闊達(かったつ)なコミュニケーションができる健全で風通しの良い組織」というものがあります。こうした組織を実現するには、人材を生かす必要があるでしょう。
他の要素についても同様です。目指す組織を実現させるには、組織の在り方の改革(CX)やデジタル変革(DX)も必要です。それらの実現には人材、人事変革(HRX)が欠かせません。また、それらを合わせて、業務効率化を図るわけです。
このように、CX、DX、HRX、業務効率化は交互に連動させ、共に変革していくことが大切だと考えています。







