2018年に特許庁が発表した「デザイン経営」宣言では、ブランディングやイノベーションにはデザイン活用が有効だと打ち出された。コニカミノルタのデザインセンターは、まさにブランド構築とイノベーションの両面でデザインの力を活用し、新たな価値の創出に取り組んでいる。コニカミノルタ流「デザイン思考」の考え方や特徴、実践例について、同社のデザイン思考の開発・浸透業務に関わるチーフデザインストラテジストの澤口氏が講演で語った概要をお届けする。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第4回 新規事業フォーラム」における「特別講演:コニカミノルタの創造性を担う現在と未来を反復する新価値創出のアプローチ/澤口冬威氏」(2024年11月に配信)をもとに制作しています。

知っているが活用されていない「デザイン思考」

 イノベーション関連職の方に「デザイン思考を知っていますか?」と尋ねると、92.2%の人が「知っている」と答えます(下図)。

 しかし「実際に活用していますか?」と尋ねると、「実際にビジネスで活用している」という人は11.5%まで減ります。

 認知度は高いのに実際に使う人が少ない背景には、デザイン思考への誤解があるように思います。

 コニカミノルタの社内でも、デザイン思考について率直な意見をもらうのですが、「デザイナーみたいな特別なセンスがないと使えない」「イノベーションや新規事業以外の仕事では関係ない」などと言われます。

 非デザイナー職でも「デザイン思考」を身に付けられることがあまり知られていないのです。「そもそも、よく分からない」という意見も多く、「デザイン思考について明確に定義してほしい」と言われることもあります。

 しかし、デザイン思考の厳密な定義は、活用する上でそれほど重要ではないと考えています。デザイン思考はいろいろな地域や企業で独自の成長を遂げていて、捉え方もさまざまです。

 そのため、定義を気にするよりも、そうしたデザイン思考の最大公約数的な要素を押さえ、創造的に問題解決を図るのが良いでしょう。