当たり前のところに当たり前のものを置く
「顧客目線」でも、ハイテク化について考えてみましょう。
ホテルにさまざまな技術が導入され、ハイテク化していくことは、便利でうれしい気持ちがある反面、どこか味気ない感情も残るものではないでしょうか。
たとえば、オンラインチェックインが導入されたからと言って、フロントにほとんどキャストがいなかったらどうなるか。レストランやパークについて質問したくても聞くことができません。オンラインチェックインのやり方がわからない人は途方にくれてしまうし、慣れていなければ「これで大丈夫かな?」と不安に思う方も多いはずです。
あるいは、チェックアウトのとき。オンラインで手続きできるからと言って、キャストのだれとも顔を合わせずにホテルをあとにするのは、すこしさみしさを感じるものではないでしょうか。キャスト側も「今回の滞在はいかがでしたか?」と直接おしゃべりをして手を振ってお見送りできる。その温かさが、ゲストの想い出を美しく締めくくってくれるはずです。
つまり、これから先、どれだけテクノロジーが進化したとしても、お客さまは「ヒューマンタッチ」も求めていると思うのです。人と人、直接顔を合わせた体温の伝わるコミュニケーションは、普遍的で必要不可欠なものでしょう。
最近はお孫さんと一緒にいらっしゃるシニア層のゲストも増えているため、パークでの過ごし方に不安をお持ちの方々も多いのではないかと思います。
「あのアトラクションはどう行ったらいいのだろう?」「見たいショーのスケジュールがわかるかしら?」「アプリでエントリーってどうやるんだろう?」
そういった不安やちょっとした疑問を、手早く確実に解消するには、明るい笑顔のキャストと直接会話をするのがおすすめです。
そして、テクノロジー化においても忘れてはならないのが、「わたしたちのお客さまにとって」という観点です。
たとえば、照明やテレビ、ラジオをつけたり、カーテンの開閉をしたり、香りを演出したり、お部屋のなかのすべてをタブレット端末1台でコントロールできるようなハイテクなホテルもあります。
しかし、ディズニーホテルでは、そのようなハイテクノロジーを導入しても、利便性の向上どころか、ゲストの不便を招く可能性の方が高いのです。