また、組織的な運用を可能にするオペレーションモデルがデザインされているため、たとえ担当者1人が離脱してもダメージは最小限で済むのです。前提のオペレーションモデルに理解がある状態で議論がなされることで、テクノロジーの持つ本来の素晴らしさを生かすことが可能になります。
■ カスタマイズの罠
グローバル展開している多くのSaaS型のツールは、その領域におけるベストプラクティスが集約された標準的なオペレーションモデルを前提に設計されています。
レベニュー組織で活用されるレベニューテクノロジー(Revenue Technology:略称RevTech)は、レベニュープロセス※ 1マネジメント、リードマネジメント、パイプラインマネジメント、フォーキャストマネジメント※ 2、カスタマーマネジメントなど収益成長のための標準的な手法を前提に設計されており、製品の思想を理解しながら、自社のオペレーションモデルを設計し、活用することが重要です。
また、SaaSは年間を通して複数回のバージョンアップが実施され、新たな機能が実装されます。こうした追加機能や新しく誕生する親和性のある別製品も標準的なオペレーションモデルを前提に開発されます。この標準的なオペレーションモデルから逸脱し、個別の事情に合わせカスタマイズを重ねてテクノロジーを活用するということは、将来享受できるかもしれない価値を放棄しているということです。
例えば、セールスフォースのCRM/SFAを利用していれば、複雑な開発をすることなくエコシステムにある世界中のテクノロジーと簡単に連携することが可能です。また、今後の展開が期待されるAIなどの先進的な機能の活用も同様です。生産性向上や今後の拡張性を想定すれば、多少のライセンス費用の高さはトレードオフだという判断もできるでしょう。繰り返しになりますがこれらのメリットの享受は、標準的なオペレーションモデルを使用していることが前提となります。
とはいえ、自社は特殊だから標準のシステムが使えなくても仕方ないと思う方もいるでしょう。国内外問わずどのような企業であっても同じように自社の特殊性を認識しています。完全に他社と同じオペレーションを実施すればよいといっているわけではなく、標準的なオペレーションモデルを理解し構築している企業と、そうではない企業では致命的な差がでてしまいます。
ゼロから悪戦苦闘しリソースを消費するよりも、価値創造やGTM戦略(Go-To-Market戦略、市場開拓戦略)のブラッシュアップ、データ活用レベルの向上など、より競合優位性を発揮する付加価値のある領域にフォーカスすることで持続的に成長可能な再現性ある組織へと進化できるでしょう。
これからのAI時代に、適切にテクノロジーを活用しレベニュー成長を進めていくためにもRevOpsの役割と重要性は今後も増していきます。
※1 企業が収益を最大化し、持続的な成長を達成するために行う一連の活動やステップ
※2 将来の売上や業績を予測し、その精度を向上させたり、その情報を元に計画を立てるプロセス。効果的なフォーキャストマネジメントは、経営戦略の決定やリソース配分の最適化において重要な役割を果たす