ただ、株式投資は株価が変動します。つまり元金部分が変化します。株価はいつなんどき急降下するかわかりません。この株主は元本割れになるようなリスクを負いたくないと考え、この100万円の株式投資をやめ、定期預金に100万円を預けたと思ってください。
100万円を定期預金に預ければ利息がつきます。年利1%の定期預金なら、1年間で1万円の利息がつきます。この1万円の利息はだれのものでしょうか。みなさんに問うまでもなく、この定期預金をしているこの元株主のものですね。
実は、定期預金における元金と利息の関係が、株式投資における資本金と当期純利益の関係によく似ているのです。
定期預金に100万円を預ける場合に、利息の1万円は毎年引き出して、元金部分の100万円だけを定期預金にしておくのか、それとも利息の1万円は満期になれば自動的に元金部分に加えて複利で運用するという定期預金にするのかは、みなさんが定期預金をするときにその運用方法を選べますね。
この定期預金における元金と利息の関係が、株式投資における資本金と当期純利益の関係によく似ていて、利息にあたる当期純利益を毎年株主が引き出すのが配当で、引き出さずにこの当期純利益を、この会社という金融商品に再投資して複利で運用していくのが、会社に積み上がっていく利益剰余金なのです。
ただ、前ページの図(図表3-2)の線は正確に言えば少し間違っています。利息にあたる当期純利益は一旦BSの利益剰余金に積み上がって、その利益剰余金の中から配当に回るものと、会社に再投資されるものが分かれるというのが正しい流れなのです。
ただ、みなさんにここでよく理解しておいていただきたいことは、定期預金における元金と利息の関係が、株式投資における資本金と当期純利益の関係によく似ているということです。
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