そもそも配当とは何か

 次に配当の仕組みについて説明します。配当の仕組みが理解できていないと財務会計がわかっているとは言えないでしょう。もっと言えば、配当の仕組みがわかっていないと、資本主義社会における財務会計の意味もわからないということです。

 ここからは、資本主義社会の論理に則って話をしていきます。簡単に言えば、会社は株主のものであるという考え方をベースに説明していきます。日本では会社はだれのものかという議論はいろいろありますが、欧米で「会社はだれのものか」と問えば、即座に「会社は株主のものである」という答えが返ってきます。資本主義の論理にしたがえば、会社は株主のものです。

 下図(図表3-2)の中のBSが「会社」を表していると思ってください。この会社に株主が出資して、この会社を保有しています。100%シェアーの一人株主だと考えていただくのがよいと思います。

 このBSで表されている会社が、1年間事業活動を行うと売上高があがります。その売上高からすべての費用を差し引くと当期純利益が残ります。さて、この当期純利益はだれのものでしょうか。

 この当期純利益は株主のものです。なぜなら、会社は株主のものだからです。しかし、読者のみなさんは、さすがにこの当期純利益は会社が稼ぎ出したのだから会社のものだろうと思われるかもしれません。

 この株主は何のためにこの会社に出資しているのでしょうか。出資の理由は株主によって、また会社によってさまざまです。しかし、株主が株式投資をする一般的な理由は、自分が持っているお金を増やしたいからです。

 世の中にお金を増やす方法はたくさんあります。定期預金をする、投資信託をする、不動産を買うなど、いろいろな方法があります。この株主は自分のお金を増やすために、このBSで表されている会社に投資していたと思ってください。例えば、100万円出資していたとしましょう。