Wolt Japan ドライブ事業本部長の安承俊氏(撮影:川口紘)

 フィンランドに本社を構えるフードデリバリー企業のWolt Japan(以下、Wolt)は、「ラストワンマイル」の商品配達を担う法人向けプラットフォームサービス「Wolt Drive」を展開している。

 コロナ禍でネットスーパーをはじめとするECの買い物が定着したが、センター・店舗から配送先まで商品を届ける配達員が不足している。商品の供給者である小売店にとっては、配達員の人件費を上回るだけの利益を確保するのが難しいという現実がある。つまり、需要はあるのに、利益が出るビジネスモデルをつくることができていないのだ。

 Woltは小売店のこうしたジレンマを、単発で仕事を請け負う「ギグワーカー」が配達を担うサービスを展開することで解決しようとしている。Wolt Driveはどのようなサービスなのだろうか。Wolt Japan営業本部長の安承俊氏に話を聞いた。

トライアルや日本調剤も利用

──フードデリバリーで知られるWoltですが、Wolt Driveとはどのようなサービスなのでしょうか。

安 承俊/Wolt Japan営業本部長

2023年 Wolt Japan入社。法人向けラストワンマイル配送サービス、Wolt Drive事業本部をリード。商社や自動車メーカー、米国のテック企業で新規事業立ち上げ責任者を歴任。インドネシアでの起業経験を持つなど、事業開発、市場進出戦略に長く携わる。シカゴ大学ブーススクールオブビジネス卒業修了。

安承俊氏(以下敬称略) Wolt Driveを一言で表すと、「ラストワンマイル代行サービス」になります。

 飲食チェーンや食品スーパー、ドラッグストアなどの小売店は、自社のECサイトやネットスーパーを持っており、通常は注文が入り次第、自社の配達員が商品をお客さまのもとへと届けます。

 Wolt DriveはWoltに登録する配達パートナーが小売店の依頼を受け、自社配達員の代わりに自転車やバイクで最終消費者に商品を届ける、というサービスです。

 Wolt Driveのニーズは大きく、すかいらーくグループは約400店舗でWolt Driveを活用していますし、他にもディスカウントストアのトライアルや外食チェーンの松屋、調剤薬局大手の日本調剤やドラッグストアの薬王堂も当社の顧客です。

──なぜこの領域に進出したのですか。

 このビジネスが現在も将来的にも、大きな需要を見込めると考えたからです。

 小売店の人手不足は深刻です。中でも、EC利用の拡大で、商品のピッキングや配達を担う人材は恒常的に不足しています。

 ECの拡大は、小売店にとっては売り上げが増えるという意味で歓迎すべきことですが、問題は1件の配送当たりにかかるコストです。

 注文が入ってから最寄りのセンター・店舗で商品をピッキングし、配達するという一連の作業は時間がかかり、人件費が重くのしかかってきます。

 また、小売チェーンにとって、特定エリアで同時に複数注文が入ることは珍しく、配達員は店舗と消費者の自宅を行ったり来たりしなければなりません。当然、往復分の人件費もかかります。複数の注文を近郊エリアでまとめて配送できない限り、損益分岐点を超えるのは難しいのです。

 つまり、小売店にとって、ECやネットスーパー業は「ラストワンマイルの配送コスト」が最大のボトルネックになっていて、需要を取りこぼしているのです。

 Woltが持つ配送網や店舗と配達パートナーをつなぐマッチングシステム(注文と配送の合理化)といった小売店にはないアセットを活用すれば、こうした課題を解決できるのではないかと考えています。

──飲食チェーンや食品スーパー、ドラッグストアがWoltに配送代行を依頼するメリットはどのようなところにあるのでしょう。