東海東京証券 代表取締役社長の北川尚子氏(撮影:宮崎訓幸)

 東海東京証券が業界の前例を覆す取り組みを積極的に進めている。「オルクドール戦略」と名付けた富裕層向けサービスの強化の他、ジョブ型雇用、フィンテック、DXなどの変革を矢継ぎ早に実践している。北川尚子社長にその狙いや進捗を聞いた。

商品の単品売りからポートフォリオの提案へ

——2023年4月1日に代表取締役に就任されました。これまでの市場環境、かじ取りの手応えをどう感じていますか。

北川 尚子/東海東京証券 代表取締役社長

1990年丸万証券(現東海東京証券)入社。小牧支店長、豊田支店長、名古屋支店営業二部長を経て、2013年執行役員。2017年髙木証券(当時)副社長となり同社の吸収合併を担当。2019年9月東海東京フィナンシャル・ホールディングスへ帰任し専務執行役員、2022年4月東海東京証券副社長 グローバル・マーケットカンパニー長を経て、2023年4月より現職。

北川尚子氏(以下敬称略) 就任したタイミングからマーケットが大きく回復しました。証券業界のビジネスモデルはマーケットの影響を受けやすいので、私は幸運だったと思っています。

 私は1990年に当社の前身である丸万証券にプロパー(新卒)で入社しました。これまで長く業務に携わってきた中で、大きな環境変化を何度も経験してきましたが、その都度、当社のリソースで何ができるのかと考え、実行してきました。まだオンゴーイング(継続中)だと思っていますが、やれることは多いと考えています。

 特に今は、NISA(少額投資非課税制度)が新NISAに生まれ変わったことで、多くの新しい投資家がマーケットに入ってきています。証券会社はこれまで、国債や特定のファンド(投資信託)を販売することに注力しがちでした。しかし当社では、お客さまをポートフォリオ全体でサポートするという考え方を大切にしており、特に私が代表取締役社長に就任してからは強く打ち出しています。

 国内の個人金融資産は約2100兆円(2023年9月時点)といわれますが、そのうちの6割が現預金です。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)ですら海外の債券や株式に投資をしているのですが、日本ではほとんどの方が利益を生む資産を持ってないのが実態です。そのような状況を社員やお客さまに理解してほしいと思っています。

——北川さんは入社15年目の2005年に支店長、2013年に執行役員、2015年に常務執行役員、2021年に専務執行役員、2022年に副社長と、役員になられたのも早いですね。これまで、どのような課題意識をお持ちだったのでしょうか。

北川 入社したときから「会社の推奨商品をお勧めする」、という売り方には疑問を持っていました。お客さまの立場でもっと違うものを組み合わせていくほうがいいのではないかという思いがありました。私は3店舗で支店長を務めましたが、営業担当の社員にも、できるだけお客さまの目線を持ってもらいたいと継続的に働きかけてきました。

 また、富裕層向けブランド「オルクドール」を立ち上げ、個人のお客様に対してポートフォリオ全体で提案するやり方を、より重視するようにしました。「お客さま視点での提案」は私自身がずっと心がけてきたことですし、代表取締役社長に就任してまずこれを実現したいと考えたのです。時代の流れでもありますが、今では多くの金融機関が、富裕層向けにポートフォリオの提案を行うようになってきています。