カテゴリー責任者の明確化と戦略遂行の仕組みづくりが大切

 そもそも、調達部門のミッションは、公平・公正・透明な取引を通じ、高いレベルの品質、コスト、デリバリーとその安定調達を実現することである。そしてサプライヤー評価の目的は、ミッションの実現のために、サプライヤーの調達市場における競争力の実態を把握し、問題や課題の改善を実施することである。従って、カテゴリー別のサプライチェーン強化目標を設定し、カテゴリー戦略、サプライヤー戦略などの調達戦略を立案、実施、管理を徹底できる仕組みを構築することは、極めて重要なことである。

 品質、コスト、デリバリーなどのサプライヤー別の評価実績を分析し、問題の是正や、再発防止の取り組みに活用している企業は多いと思う。しかしながら、カテゴリー別や、サプライヤー別に評価結果を分析し、強化目標を設定して、戦略を立案、実施、徹底できている企業は多くはないように思う。問題に対しての対処だけでなく、強化目標を設定し推進することこそが、競争力強化のためには重要である。

①カテゴリー別サプライチェーン強化目標の設定

 サプライチェーン強化目標設定について、例として以下の図を見ながら重要な3つの事項についてお話しする。カテゴリーAでは現在国内3社、海外2社のサプライヤーと取引しているとする。サプライヤー評価の平均点は、今期は100点満点の65点である。

 それを、3年後までに、海外の現地工場の近郊で新規サプライヤーを新たに探索、育成する。さらに、国内ではサプライヤー集約を進め、コアサプライヤー1社とは協業の取り組みをさらに進めることで、現在の65点を80点にしていきたい、というようなイメージで目標を設定する。その上でカテゴリー戦略、サプライヤー戦略を立案し実行していくことが、サプライチェーン強化には重要である。

②公平かつ具体的なサプライヤー評価基準の整備と運用

 評価結果をサプライヤーにフィードバックし、当該カテゴリーにおけるそのサプライヤーの位置付けを伝え、サプライヤーへ改善を促す。(例えば、納期達成率については5社中、4番目の順位、など)

 そのためには、サプライヤー評価基準は具体的で、評価した根拠が明確になっていること、評価結果が担当者によってバラついていないことが大切となる。

 中には、「評価結果をサプライヤーにフィードバックしても、点数の根拠を明示できない。改善の促進ができていない」という悩みを抱える企業、調達部門もある。

 具体的な評価とは、例えば、サプライヤーの財務状況、品質不良率、納期達成率、などの実績評価のように、定量的に評価する方法と、品質管理、納期管理の仕組み(業務プロセスや体制など)の良しあしを定性的な取り組みレベルで評価を行う方法がある。こういった評価については、カテゴリーの業界トップレベルの情報などを収集、目標を設定、評価基準を整備することが重要である。

 また、評価はサプライヤーの現場に行って実態を確認し、インタビューなどを通じて行うわけであるが、評価できる人材を育成する仕組みを整備することも大切である。

③カテゴリー戦略立案、マネジメントプロセス、推進体制の整備と推進

 評価に基づき調達戦略、実行計画を立案し、それを確実に実行管理することも重要である。そのためにはカテゴリーの責任者を設定し、社内の開発、生産技術、製造、生産管理、品質保証、等の関連部門および、サプライヤーと連携し、改善に取り組む必要がある。

「不良は品質保証部門、納期は生産管理部門、コストは調達部門が管理責任だが、カテゴリー別のサプライチェーン強化の責任者は決まっていない」という企業も存在する。カテゴリーの責任者を明確にすることが重要である。また、サプライチェーンを強化できる人材を育成する仕組みを整備することも大切である。

コンサルタント 中山 隆 (なかやま たかし)

生産コンサルティング事業本部
シニアコンサルタント

メーカーにおける調達の実務経験を持つ。1984年JMAC日本能率協会コンサルティングに入社。入社後、一貫して調達領域のコンサルティングの専門として活動してきた。多くの業界で、直接材、設備、間接材を対象とし、利益創出、製品競争力強化のための、調達コスト戦略の立案・実行を軸とし、サプライヤーマネジメント、組織体制、業務プロセスの強化、リスクマネジメント、コンプライアンス、調達プロフェッショナル育成、情報基盤整備等の、調達基盤強化に長く取り組んでいる。

海外では中国、台湾、韓国、タイ、スウェーデンでのコンサルティング経験がある。