サプライヤー評価がうまく活用できていない企業が多い

  製造業の直接材(製品を構成する、原料、材料、部品、加工品、組立品)の取引先については、多くの企業が何らかのサプライヤー評価を行っていると思う。しかし、その評価結果を調達カテゴリー戦略、サプライヤー戦略などの、調達戦略にうまく活用している企業は、決して多くないと感じている。

 調達セミナーの講師をした際に、「サプライチェーンを強化するには、サプライヤー評価や、製品戦略、調達市場動向などの社内、社外情報の収集と分析に基づき、カテゴリー(調達品目グループ)別に強化目標を設定することが重要だ」と話をしたところ、参加されてた自動車部品企業の新任バイヤーから、「調達戦略立案のために、サプライヤー評価や、必要な情報の収集、分析、目標設定を行うなんて当たり前のことですよね」と質問された。

 その際、私は、「カテゴリー別に強化目標を設定していない企業は意外と多いですよ。会社に戻ったら確認してみてください」と答えた。後日その企業にコンサルティングに伺う機会があり、その担当者と会うことができた。公開セミナーの際の話を覚えていたようで「実はサプライヤー評価は行っていましたが、カテゴリー別の強化目標の設定、それを達成するための調達戦略の立案と実行の徹底はできていませんでした」という話であった。

「原因は何だと思いますか」と尋ねたところ「カテゴリー別にサプライチェーン強化の目標を設定する、という考え方がなかったこと、調達戦略を検討、実施の責任者、担当者が決まっていなかった、ということが、大きな要因だと思います」と言っていた。

実施する目的が明確でない、サプライヤー評価

 なぜ、サプライヤー評価が調達戦略に生かされないのか?

 その理由の一つは、そもそもサプライヤー評価は何のために実施するのか、という目的が明確でないことにあると考える。業務規程にはサプライヤーの評価を実施することは明記されているが、上位の目的や状態目標が具体的でない、あるいは担当者に浸透していないということである。そうすると仕事としては取り組むが、機能強化や、業務の改善についての優先順位は低くなってくると考えられる。ある企業では、「サプライヤー評価は業務効率化のために、項目を絞り簡素化しました」「評価回数を削減しました」というようなケースもあった。