調達の手配業務で後追い業務が、付加価値業務を圧迫する

 調達部門における重要機能として、大方の企業では、①調達コストダウンの推進②日々の確実な部材調達を挙げるであろう。そして今後、より付加価値を生み出すための「①調達コストダウンの推進」にさらに注力したいと考えている企業は多いのではないだろうか。

 一方、実態を見てみると、手配業務に圧迫されて、コストダウンに注力できないとの声もよく聞く。調達部門の体制によっては、手配業務が4~5割の業務比率を占めているケースもある。

 手配業務とは一般的に、生産計画に基づく調達計画に沿って発注を行い、良品を納期通りに着実に納入してもらうための管理を行うものである。業種にもよるが、量産型の繰り返し発注においては、発注業務自体は自動化されているケースがほとんどであろう。

 その中で手間がかかっているのは、品質トラブルや納期変更、トラブルへの対応と調整である。必要なものを、必要な量・必要なタイミングで確保をすることは重要な業務であり、計画通りに進めばよいものの、どこかで問題が起きた場合には緊急的な対応が必要となる。この対応自体は、トラブル状態から計画された水準に戻す役割でしかないので、ここでは後追い業務と言う。

 トラブル対応の後追い業務は緊急的対応が必要なため、他に計画されていた業務より優先した対応が求められ、その結果として、元々計画していた戦略性の高い業務が後回しになったり、できなくなったりする。この繰り返しで、付加価値を生み出すコストダウン業務への時間が圧迫されて、コストダウンが進まないといった事象につながっているということが少なくない。

後追い業務への根源対策がとれていない

 なぜ、後追い業務は減らないのか。近年はISOを取得している企業も多いため、サプライヤー起因のトラブルによる後追い業務に対しては、トラブルの発生要因の特定と対策実施をするプロセスが構築され、運用されていることがほとんどだと思う。それでも後追い業務が減らない場合は、そのプロセスの運用に問題があることが多い。

 例えば、次のような状況である。
・不具合への対処内容が対策として記されている。
・原因の究明が甘い。本来複数要因が挙がるものでも、単一の要因しか挙がっていない。
・対策内容が、原因と整合していない。
・上記のような内容報告なのに、承認されている。
・対策の実施状況の現地確認がなされていない。

 いずれのケースでも、後追い業務への根源対策は採られておらず、結果としてトラブルは減っていない。トラブルには再発も少なからずあるという状況である。

 調達の手配業務におけるトラブルには、QC(Quality Control:品質管理)的な問題解決のアプローチが効果的である。調達トラブルでは、当然サプライヤーもその問題解決に関わる必要があり、運用の徹底を図るには社内よりも難度が高い。サプライヤーにおいて、問題解決アプローチに対する理解が自社と同等ではないケースもあるので、正しい問題解決のアプローチから外れにくくするフォーマットの工夫と、その徹底を図るためのフォローが重要となる。