左から、PTCジャパン社長の神谷知信氏、PTC次期CEOのニール・バルア氏、PTC会長兼CEOのジム・へプルマン氏

 製造業のDXを推進するサービスを提供する米PTC(Parametric Technology Corporation、米国・マサチューセッツ州)。2024年1月19日、同社は2月14日のCEO交代を前に都内で記者会見を開き、事業の概況と今後の経営方針を説明した。2010年からCEOを務めているジム・へプルマン氏から経営のバトンを引き継ぐのは、ニール・バルア氏。バルア氏が、PTCにとって「日本市場が最も重要な市場の1つとなる」と語る理由とは?

DX推進の波受け急成長

 PTCは35年以上の歴史を持つ製造業のDXを支援するIT企業だ。世界35カ国以上で事業を展開し、約3万5000社の顧客を抱える。主な製品は、自動車のソフトウェア開発を支援する「Codebeamer」やエネルギー設備・機器のデータを管理する「Windchill」などのソリューション。

PTC記者会見の資料より
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 Codebeamerは独フォルクスワーゲン・グループが新型電気自動車開発に際して導入、Windchillは荏原製作所傘下の蒸気タービンなどを開発する荏原エリオットらが取り入れている。いずれのサービスも、従来型の製造管理では難しかったアジャイル開発やデータ管理など「モノのソフトウェア化」に必要な機能を搭載している。

 世界的なDX推進の追い風もあり、PTCの業績は好調だ。2023年度は売上高昨年比約23%増の21億米ドル、時価総額は約200億米ドルを達成した。

 ジム・へプルマン氏は「世界のDX推進企業を見渡しても、当社の2023年度の成長率はトップクラス。我々が提供するソリューションは、製造業・自動車関連企業のどんな企業も欲しているものだ。どの企業も“ソフトウェア化”を急速に進めなければマーケットシェアを失うという危機感があるのだろう」と分析する。

 PTCは日本市場の深耕も目論んでいる。へプルマン氏は「日本企業のDXは欧米企業に後れを取っていた」としつつ、「我々の顧客である日本企業から、DXをなんとしても進めなければならない、という切迫感を感じる。さらに日本企業は高齢化と人手不足が顕著だ。ソフトウェアの扱いに慣れている若手の登用と業務の効率化は急務であり、そうした状況がPTCへの高い関心を支えている」と分析する。

PTC会長兼CEOのジム・へプルマン氏

 新たにCEOに就任するバルア氏は「先日、京都で日系の自動車メーカー幹部と会合したが、特に当社のCodebeamerへの注目度が高かった。日本市場はPTCにとっても重要な位置付けとなるだろう」と自信をのぞかせた。

PTC次期CEOのニール・バルア氏