日本のグリーン・ヘルへ! しかし焦ってはいけない

 最後は、周回路です。1周2.1kmのコースは丘を駆け上がって下がりながらコーナリングを繰り返すようレイアウトされています。クルマ好きには有名なニュルブルクリンク(ドイツ)のカルーセルというコーナーやラグナセカ(アメリカ)のコークスクリューというコーナーを模したコーナーも日本の左側通行に合わせて逆向きに造られているという凝りっぷりです。

 2年前のオープン時に、センターの911カレラで走った時のことを思い出しながら走り始めました。その時はインストラクターが助手席に同乗して、説明付きで走りました。

「レースのようにラップタイムを縮めることが目的なのではなく、いかに滑らかに走るかを体験していただくことが目的です。それが公道走行での安全にもつながりますので」

 アタマでは理解しているつもりでも、その通りに運転するのは簡単ではありません。速度制限も信号機もありませんから、911カレラの胸のすくような走りっぷりに夢中になって、ついつい調子に乗ってアクセルペダルを踏み過ぎてしまいます。オッと気付いた時には強目にブレーキを踏んでしまっています。すると、次には再び強く加速してしまい、無駄な加減速を繰り返してしまうことになるのです。

 コーナーリングについても同様です。一つや二つのコーナーを最短距離で抜けることにムキになってしまうと、三つ目や四つ目、さらにその先のコーナーがキツくなってしまいます。1周する中で、加速と減速、コーナリングなどすべてを調和させ、だんだんと総合的にスピードを上げていく、蛮勇ではなく理性が求められます。

PDKはこれほど偉大だった

 “対話”というと大袈裟ですが、周回路を運転操作に集中して走っていると、自分のクルマの反応が手に取るように感じ取れてきます。特に、著しく感じ取れたのはトランスミッションの優秀性です。自分のクルマのトランスミッションは「PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)」という名前の付いた、ツインクラッチ式の2ペダルATですが、フットブレーキの踏み込み具合に応じて、シフトダウンします。

 その原理や作動具合は自分のクルマでも、他のポルシェでも国内外で体験してきましたが、改めて専用コースで走るとその特徴を顕著に感じることができました。

 基本的な動きとしては、コーナーが迫ってきてフットブレーキを踏むとギアが1段落ちてエンジンブレーキも併用します。これが、強く踏むと2段ないし3段落ちてより強く減速します。でも、その時にハンドルを切っていたり、下り勾配の途中だったり、走行スピードが高くなかったりすると1段しか落ちなかったりします。シフトダウンの判断をクルマが行ってくれているのですが、塩梅が絶妙で、まるでエキスパートドライバーが運転しているようなのです。走行モードをノーマルからスポーツに変えても変わってきます。

 PDKでは、クルマに設置された各種のセンサーとコンピューターなどからの情報によってギアがシフトされています。日産GT-Rのように、ポルシェ以外のメーカーでも同じ原理を用いたトランスミッションを採用しているクルマもありますが、その働きの賢さと素早さではPDKが一歩先んじています。周回路を走っている間中、自分のクルマに惚れ直してしまいました。