石油元売り大手のコスモエネルギーホールディングス(以下、コスモエネルギー)が全社的なDXの推進に「本気」を見せている。脱炭素社会の到来により業界構造が大きく変化する中、「データドリブン経営」の実践で新たなサービスの最適化を目指す。そんな同社は2021年11月にCDOとしてルゾンカ典子氏を招聘し、DX推進の為の組織としてコーポレートDX戦略部を新設。ルゾンカ氏はこれまで米国の金融機関を中心に社内におけるデータ利活用を進めてきたDX推進のスペシャリストだ。「日本の大企業の社員は優秀。必要なのはデータ利活用の動機付けだけ」と語る同氏に、コスモエネルギーにおけるDXの方向性と施策について話を聞いた。
経営陣から感じた「本気度」
――ルゾンカさんはこれまで金融業界で様々なDX案件に携わってこられました。なぜコスモエネルギーに入社されたのでしょう。
ルゾンカ典子氏(以下敬称略) DXを推進する「本気度」を経営陣から感じたからです。私が入社したのは2021年11月ですが、通常の企業では新年度の始まりである2022年4月からCDO職を用意し、着任するというのが一般的でしょう。期中にポジションを用意するのは大変なことだと思いますが、逆に「あぁこの会社は本気でDXに取り組もうとしているのだな」と実感したのも事実です。
全社的なDXの推進には、様々な部署の利害関係を横断的にまとめることが必要不可欠です。その調整にあたっては経営陣が果たす役割が大きいのですが、コスモエネルギーは経営陣が全面的にバックアップする、という明確な意思表示をしてくれました。
実際、私がCDOとして着任したのは11月という期中ですが、そのタイミングでコーポレートDX戦略部には、社内の各部門のエース的存在を3人配置してくれたのです。
――コスモエネルギーはどのようなDX戦略を描いているのでしょうか。
ルゾンカ 環境規制や第4次産業革命といった外部で急速に変化するトレンドに対応できる「データドリブン経営」を行うことです。エネルギー業界は規制産業であったこともあり、これまでは日々変化するお客様の姿を「数値化」することが疎かになっていた面があります。しかし、これからは産業構造が大きく変化し、従来のプレイヤーとだけ戦っていては商売のチャンスを取り逃がすことになりかねません。
そこで、当社がこれまで培ってきたエネルギー供給者としてのノウハウを徹底的にデータ化し、社内業務の効率化や、新たなサービスの提供に取り組もうとしています。この取り組みがコスモエネルギーの「データドリブン経営」ということになります。