日本製品の中国マーケティング戦略には知的財産を取り入れて活用することがポイントになる。写真は第3回中国国際消費品博覧会。写真:新華社/アフロ

 中国では、ゼロコロナ政策の終了後、期待されるほどのリベンジ消費が起きていないようだが、飲食消費などのサービス消費を含む消費全般には力強い回復がみられている。

 4月中旬に、国家統計局は中国の2023年第1四半期の主要経済指標を発表したが、消費を表す社会消費財小売総額が前年同期比5.8%増であったのに対して、固定資産投資は5.1%増にとどまった。これは投資依存の経済発展から脱皮し、内需拡大に力を入れようとする中国にとっては朗報といえるだろう。

 筆者は3月下旬から4月上旬にかけて約2週間の春休みを取り、3年半ぶりに中国に帰り、深センと瀋陽に滞在した。

 今回は肌で感じた現地の空気感と回復の勢いをお伝えしたい。

経済を回復させる前に「信心」を回復させる

 昨年12月の記事「2023年の中国はコロナ禍で失われた3年から抜け出せるか」 では「信心(しんしん、ここでは中国経済の発展が必ず実現すると信じる、という意味)」の話をしたが、経済の回復の前に「信心」の回復が重要視されているのが、今の中国だ。

 そうした中、民営企業の重要性が強調され、図られたタイミングでジャーク・マー氏が帰国している。

 外交関係というと、シンガポールのリー・シェンロン首相、台湾の馬英九氏、フランスのマクロン大統領およびブラジルのルーラ大統領の中国訪問が大いに取り上げられたが、一連の動きを国民の「信心」の回復につなげようとする政府の思惑は明らかだ。

国内の移動・旅行が回復、次に向かうのは海外旅行

 中国の2023年第1四半期の航空旅客数は 1 億 2900 万人と前年同期比 68.9%も増えた。

 筆者は早朝5時の深セン空港で、言葉では表現できないほど大勢の人と“遭遇”し、驚いた。

 深センと瀋陽を往復する国内線は満席で国内移動は回復した様子だったし、日本でANAやJALが国内線の利用を促すセールキャンペーンを行ったように、中国南方航空は「暢遊(思う存分楽しむ)中国」という期間限定の乗り放題チケットを売り出し、航空利用の回復を加速させようとした。

 また、行動制限のないゴールデンウイークではチケットをとれないほど多くの人が出掛け、観光地やサービス施設などは急増する旅行者への対応に追われている。

 言うまでもないが、この先、増えていく行き先は海外だ。3年ほど海外旅行ができなかったストレスと、国際便の増便、待ちに待った中国への入国緩和が相まって、皆が海外に行きたいと言っている。

 日本は中国から近いし、円安もあり、一番行きたい旅行先になっている。ただし、日本へはコロナ禍を経ての癒しの旅を求め、従来の爆買いよりも、温泉や体験型娯楽施設での消費が大きく期待できそうなのが、これまでとの違いだ。