従業員らはジャシーCEOと幹部チーム宛ての嘆願書を作成し、この中で決定を取り下げるよう求めた。加えて、創業者のジェフ・ベゾス氏が掲げていた目標である「地球上で最高の雇用主」や、「多様性」「手頃な住宅価格」「持続可能性」などに関するアマゾンの立場に反していると指摘した。
ジャシー氏は21年10月のメッセージで、「私たちのような規模の会社では、すべてのチームが最適に機能するための画一的なアプローチはない」と述べていたが、従業員らはこの点も指摘した。
多くの従業員がこの言葉を信用し、出社再開を求められないことを前提としたライフプランを立てたという。ある従業員によると、新型コロナ下に移住した人や、リモート勤務を条件に入社した人は、今後どのような影響が及ぶのか懸念しているという。
アマゾンの従業員数は過去3年間で急増した。同社はこの期間、労働力の分散化を図っており、シアトルやニューヨーク、北カリフォルニアなどの主要な技術拠点以外からも多くの人材を採用した。
アマゾンは現時点で、在宅勤務者に対し転勤を求めるかどうか明らかにしていない。ジャシー氏は新方針について「わずかな例外がある」と述べたが、その詳細は分かっていない。
ワークライフバランスに影響か
嘆願書には、従業員を対象に行ったアンケート調査も記されている。それによると、相当数が完全な在宅勤務を希望しており、その一環として月1回のオフィスでの対面会議があってもかまわないとしている。また、出社は週2回までとする人も相当数いるという。嘆願書には、リモートワーク勤務が企業の生産性を高め、経費削減でき、優秀な人材を引き付けられるとする調査結果も記されている。
このほか、大半の勤務に出社を義務づけることは、ワークライフバランスに影響を及ぼすとも指摘している。とりわけ、子育て中の従業員、親を介護している従業員、マイノリティー、障害のある人などの仕事と生活により大きな負担がかかるという。
また出社を一様に求める会社の方針にも疑問の声が上がっている。例えばグローバル部門に所属する一部の従業員は、海外の担当者とオンライン会議するためだけに出社することになるという。所属するオフィスに同僚が1人もいないという従業員もおり、その場合、オンライン会議への参加場所が自宅からオフィスに移るという違いしかないという。
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