・自由視点映像「ボリュメトリックビデオ」

 実世界の時間と空間を3次元(3D)データとして丸ごとキャプチャーすることで空間内の自由な位置や角度からの映像生成を可能にするシステム。キヤノンでは主にスタジアム&アリーナとスタジオ向けに開発しており、米国ではオハイオ州クリーブランドのロケット・モーゲージ・フィールドハウス、ニューヨーク州ブルックリンのバークレイズ・センターの2つのNBAアリーナで導入済みである。自由視点映像はライブ中継、リプレイ映像、バーチャル広告など複数の用途で活用でき、観客の視覚体験を豊かにする役割を担っている。

 キヤノンブースでは、自由視点映像を使って『Knock at the Cabin』の重要なアクションシーンを複数の視点で楽しむことができた。

・MRシステム「MREAL」(エムリアル)

 現実とCGをリアルタイムに、違和感なく融合し、あたかも目の前で現実に存在しているかのような臨場感を提供するのがMR(Mixed Reality)システム「MREAL」だ。技術的にはヘッドマウントディスプレイに内蔵されたカメラのCMOSセンサーが捉えた目の前の映像(リアルの映像)と仮想現実の3D CG映像(バーチャルの映像)をコンピュータでリアルタイムに合成し、ヘッドマウントディスプレイに表示するものである。

 キヤノンブースでは『Knock at the Cabin』のストーリーに合わせて家具などのオブジェクトを操作しながら小屋内への侵入者を防ぐ体験を提供していた。

・ハイブリッドなコラボレーションを実現する「AMLOS」(アムロス)

 CES 2023の「CESベスト・オブ・イノベーションアワード」を受賞した「AMLOS」は、Activate My Line of Sightの略。元々はオフィス勤務者とリモート勤務者が混在するハイブリットなオンライン会議において、情報格差からストレスを抱えてしまいがちなリモート勤務者側に「複数の視点」を提供することでコラボレーションの質を高めることを狙いとしたものである。

 職場に配置された1台のカメラからプレゼンター、ホワイトボード、会議室全体、注目してほしい視点など、複数の映像をフルHDで配信できるだけでなく、リモート勤務者側からでもプレゼンターの表情、ホワイトボードに書かれた細かい内容、会議室内の状況、付箋や机上の小物など指定した部分の映像を自由に選択でき、まるで同じ空間にいるかのような形でオンライン会議を進めることが可能になる。またホワイトボードの反射や歪みなどの補正や人間の映り込みなど自動除去を行うことができる。これによりリモート勤務者のストレスは軽減される。

 キヤノンブースではカメラを設置したフィラデルフィアにある『Knock at the Cabin』小屋と「AMLOS」で接続し、遠隔地にいる俳優と協働して書きかけのメモや壊れた家具などの手がかりから劇中の謎を追う体験を提供していた。「AMLOS」はオンライン会議や学校教育などでの活用のみならず、エンターテインメント領域でもソリューションを提供できる可能性があるというのは、興味深い発見だった。

ハイブリッドなコラボレーションを実現するキヤノンの「AMLOS」(アムロス)。専用のカメラを導入するだけで「Limitless」なコラボレーション体験ができる(筆者撮影)

 今回、前編ではCES 2023全体のアジェンダになった「ヒューマンセキュリティ」と特に筆者の印象に残ったジョンディア、ボッシュ、キヤノンの取り組みをレポートした。続く後編では、クルマの「スマートフォン化」が進み、顧客体験(CX)デザインがプレミアム価値の源泉になる自動運転の領域について、BMW、ステランティス、ソニー・ホンダモビリティの話題を中心に考えてみたい。

(*)後編は1月23日に公開します。