マーケティングの本質は普遍的でありつつ、時代の流れに積極的に対応していくことも大切だ。本稿では、P&Gジャパンや資生堂などの有名企業のマーケティングに携わった実績を持つ、クー・マーケティング・カンパニー代表取締役の音部大輔氏が、これからの時代に求められるマーケティングの考え方について語った。
※本コンテンツは、2022年9月20日(火)に開催されたJBpress/JDIR主催「第6回 マーケティング&セールスイノベーションフォーラム」の特別講演2「<BtoB、BtoC 不問!>音部大輔のマーケティング総論~これからの時代に求められるマーケティングの考え方、組織の在り方、他部門の力の引き出し方~」の内容を採録したものです。
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ブランドの展開によって異なるCMOの2種類のタイプと特徴
音部氏は、P&Gジャパンやダノンジャパン、資生堂といった名だたる企業でマーケティング担当副社長やCMO(最高マーケティング責任者)などを歴任。複数ブランド群を擁するマーケティング組織の構築・強化を指揮してきた。CMOという役職は日本ではまだなじみが薄いが、マーケティング戦略の全体像を示し、組織を構築する重要なポジションである。特にコミュニケーションや商品企画に多くの資源を投下する企業にとっては、ビジネスの要といえる存在だ。
音部氏によると、CMOには「ナポレオン型」と「モルトケ型」の2種類のタイプがあるという。
ナポレオンはフランス革命期のフランスの皇帝でありつつ、現場指揮官としても有名を馳せた人物だ。それに対してモルトケは、国家元首や現場指揮官といった立場ではないが、普仏戦争で個々の部隊の力を引き出すことに成功した、プロイセン王国の参謀総長である。
ナポレオン型は自社に1つのブランドしか持たず、1つの市場で事業を展開している企業のCMOに当たる。このナポレオン型では、CMOの能力がそのまま組織の能力に直結し、CMO自らが直接的に各活動についての意思決定を行う。組織の形態としては、上意下達型となり、CMOが考えたことをいかに実行に移すかが要となる。
それに対してモルトケ型は、1社で複数のブランドを持つ。その数だけ市場が存在するため、CMOが個別に対応していては間に合わない。そこで、組織を成長させ、それぞれのブランドチームの能力を引き出必要がある。統合・調整を図りつつも、各ブランドが自律的に動くという組織形態が期待される。
「複数のブランドを展開している企業では、それぞれのブランドを独立した存在でありつつ、1つのブランドで得られた知見やノウハウを横展開して相乗効果を得られるよう、複数ブランドを前提としたブランドマネジメントが大切です。私が代表取締役を務めるクー・マーケティング・カンパニーでは、こうした経験を生かし、CMOのシェアリングサービスなどを通じて、外部から企業のブランドマネジメントをサポートしています」