アマゾンの約束2:商品詳細ページに2つ目の購入ボタン

 欧州委の2つ目の懸念であるショッピングカートボックスについても、アマゾンは譲歩案を提示した。

 アマゾンでは、マーケットプレイスの商品詳細ページは1商品に付き1ページのみ設けられる。同じ商品の出品者が複数ある場合、ページ内の「他の出品者」というリンクをクリックすると、すべての出品者の商品が表示でき、価格などを比較できる。消費者は気に入った出品者の横にある「カートに追加する」ボタンを押すことで購入手続きを進められる。

 しかし、多くの消費者は複数の出品者を表示できるこの機能に気付かず、商品詳細ページ右に大きく表示される「今すぐ購入」や「カートに入れる」を押して購入する。つまり、出品者は商品詳細ページにあるこれらのボタンを獲得できるか否かで売り上げが大きく変わる。

 欧州委は、アマゾンがどのような基準でこの権利を与えているかを詳しく調べていた。アマゾンの自社商品に偏っていないか、自社の物流サービスを利用する出品者を優位に扱っていないかどうかを調査していた。

 これについてアマゾンは、商品詳細ページに現在ある購入ボタンの下に、2つ目の購入ボタンを設けることを約束した。2つ目の購入ボタンは、1つ目のボタンと、価格や配送条件が異なる商品がある場合に表示する。これにより、サードパーティー出品者により多くの露出機会がもたらされると欧州委は述べている。欧州委は今後、2つ目のボタンの効果を監視する。消費者への訴求につながらないと判断した場合、アマゾンに表示方法の改善を要求する。

アマゾンの約束3:Prime配送対象商品を平等に

 欧州委が問題視する3つめは、Primeプログラムの資格獲得基準。欧州委は、アマゾンが同プログラムで自社の直販商品や、自社の物流サービスを利用する出品者の商品を優遇しているのではないかと疑っている。そこでアマゾンの直販商品と、他社の物流サービスを利用する出品者の商品を平等にPrime配送の対象にすることを約束した。

 また出品者が配送業者を自由に選択できるようにする。出品者は配送業者と直接交渉ができるようになる。欧州委によれば、現在はアマゾンによって認定された配送業者だけがPrimeの荷物を取り扱える。

 このほかアマゾンは、他の配送業者の業務データ(配送記録)にアクセスしないこと、配送業者が消費者に配達通知メールを直接送信できるようにすることも約束した。現在、消費者と配送業者間の通信はアマゾンが管理しているという。

 ベステアー上級副委員長は、「これらの新しいルールにより、アマゾンと競合する小売業者や配送業者、そして欧州の消費者はより多くの機会と選択肢を得ることができる」と述べた。

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アマゾンはこれらのルールを最長7年間順守しなければならない。欧州委はその間監視を続ける。もし違反行為があったと判断された場合、年間売上高の10%の制裁金を科される可能性があるという。