サムスン、ベトナムに33億米ドルの追加投資

 こうした中、ベトナムが世界の半導体メーカーにとって、中国に代わる生産拠点として浮上している。 ベトナムは、研究・教育センターを設立するために数十億米ドル(数千億円)を投じており、主要な半導体メーカーを引き付けている。

 半導体メモリーで最大手のサムスン電子は、ベトナムに33億米ドル(約4500億円)の追加投資をする。電子部品などを手がける関連会社のサムスン電機が半導体パッケージの先端基板の量産ラインを整備する。23年7月までに量産を開始する予定だ。

 また、KPMGのキッジパース氏によると、インドはマイクロプロセッサーやメモリーサブシステム、アナログ半導体設計の人材が拡大しているため、これらの半導体メーカーの生産拠点としても台頭している。ただ、インドは労働力が豊富でコストが低いものの、生産能力の点で魅力に欠けるという。

中国は製造競争力でアジア地域をリード

 半導体メーカーにとってアジア地域の魅力は高まっているが、製造競争力の点で中国は依然として地域経済をリードしている。中国国内の半導体産業は、5G(第5世代移動通信システム)や自動運転、AI(人工知能)などの分野の需要増によっても支えられているとキッジパース氏は指摘する。

 CNBCによると、中国は特にローエンド半導体の重要な生産国。世界の半導体生産の約16%の市場シェアを持つ。米国を上回り、韓国と台湾に続いている。

 シンガポール国立大学のヤングウック・リュー氏は「ベトナムとインドは生産能力に強みがないため、米国の対中輸出規制からの利益を得られるかどうかは疑わしい」と指摘する。その上で同氏は、「競争力のある価格で高品質半導体を生産できる国や企業、つまり、中国や中国企業に取って代わることができる国や企業が、将来勝者として浮上する」とも述べている。