物流の自動化進める2つの理由

 アマゾンは12年に倉庫向け搬送ロボットを手がける米キバ・システムズを7億7500万ドル(当時の為替レートで約650億円)で買収し、物流業務の自動化に力を入れ始めた。21年には前述したロボット開発・製造拠点(延べ面積約3万2500平方メートル)を開設。また、22年9月には物流施設内ロボットシステムなどを開発するベルギーのクロースターマンズを買収すると明らかにした。

 同社がこうして物流の自動化を進めるのには、2つの理由がある。1つはコスト削減だ。特に今回披露した商品仕分けロボットのSparrowは、大幅な人件費低減につながる技術だとみられている。ウォール・ストリート・ジャーナルは専門家の話として、商品のピッキング作業にかかる人件費は、倉庫の全人件費の約半分を占めると報じている。米国の市場調査会社インタラクト・アナリシスのアナリストは「商品ピッキングのロボットアームを使用できるようになれば、倉庫の自動化に大きなブレークスルーがもたらされる」と述べている。

 もう1つは、労働環境の改善だ。アマゾンのような企業の倉庫で働く従業員は、反復ストレス障害や筋骨格障害を発症するリスクがあると指摘されている。そのためアマゾンでは、労働災害低減のための安全プログラムを導入し作業スケジュールを管理している。

 アマゾンのクインリバン副社長は、「Sparrowは安全手順の次のステップとなることを目的としている」とし、「私たちが直面している反復動作の課題において、物流ネットワークを変革させる一助となる」と説明した。

コスト削減の対象外

 アマゾンはコスト削減の一環として全社的に事業規模を縮小している。だが、ウォール・ストリート・ジャーナルは、「Sparrowのような最先端ロボットは、アマゾンで拡大が続く事業の1つのようだ」と報じている。

 また、Sparrowが将来、倉庫従業員に取って代わることはないとクインリバン副社長は話している。「むしろ、ロボットを管理・操作するための役割が増える」(同氏)。 アマゾンでは今後も多くの最新技術を導入していく。最近は、そのための新たな職種を700種以上追加したと同氏は説明している。