(写真:當舎慎悟/アフロ)

 米グーグル傘下の動画共有サイト「YouTube(ユーチューブ)」が、動画配信サービスのオンラインストアを開設する計画だと、米ウォール・ストリート・ジャーナルが8月12日に報じた。ストアへの参加についてエンターテインメント企業と協議を始めたと、事情に詳しい関係者は話している。

YouTubeアプリ内に「チャンネル・ストア」

 ユーチューブはこの動画配信プラットフォームを社内で「チャンネル・ストア」と呼んでおり、少なくとも1年半前から準備を進めてきた。早ければ今秋にも立ち上げる計画だという。

 ユーチューブは現在、主要ケーブルテレビ局の番組を配信する「YouTube TV」を、月64.99ドル(約8700円)のサブスクリプション(定額課金)型サービスとして提供している。加入者は米ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの「HBO Max」などの、他の動画配信サブスクサービスを追加できる。

 ユーチューブが計画している新たなチャンネル・ストアでは、利用者がYouTubeメインアプリから、希望する動画配信サービスをアラカルト方式で選べるようになるという。

 ユーチューブは2020年に動画配信オンラインストアの立ち上げについて協議していたと、米メディアのジ・インフォメーションが先ごろ報じていた。今回の新たな計画については、新規利用者の獲得を切望しているエンターテイメント企業の間で注目を集めていると、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

 YouTubeには月20億人以上の利用者がログインしている。同社は利用者の規模と多様性を理由に、新たな計画に参加すべきだと、企業に売り込んでいるという。

競争激化の動画配信市場、成長鈍化も

 ただ、米国の動画配信市場は競争が激化しているうえ、成長鈍化に直面している。ユーチューブは米ネットフリックスや米ウォルト・ディズニー、米アマゾン・ドット・コムなどのライバルが犇めく超競争環境に身を置くことになる。

 米国の動画配信市場では、ネットフリックスが業界トップで、その地位は揺るぎないとみられてきた。だがネットフリックスは2022年1~3月期の業績発表で、3カ月ごとに開示している会員数が20万人減少し、過去10年で初めてマイナスに転じたと明らかにした。22年4~6月期は会員数が3月末と比べて97万人減り、6月末時点で2億2067万人になったと報告した。

 一方、競合のディズニーが22年8月10日に決算発表と合わせて開示した最新状況によると、Disney+(ディズニープラス)の会員数は4~6月期に1440万人増加し、1億5210万人になった。「Hulu」やスポーツ配信の「ESPN+」などを含めたディズニーの合計会員数は2億2110万人となり、ネットフリックスをわずかに上回った。