動画サービス「Apple TV+(アップルTVプラス)で配信している映画「コーダ あいのうた」が、第94回アカデミー賞で作品賞、脚色賞、助演男優賞を受賞した。動画配信の映画がアカデミー作品賞を獲得したのは初めてだ。
エンタメ分野の野望
この市場には米ネットフリックスや米ウォルト・ディズニー、米アマゾン・ドット・コムなどが参入しており、各社は可能な限り多くの作品を配信しようとし烈な競争を繰り広げている。しかし米アップルには作品数が少なく、ネットフリックスやアマゾンなどに比べて事業規模が小さい。アップルは音楽配信やポッドキャスト(音声番組)で成功を収めており、これらの事業と比較しても動画配信の規模は小さいと指摘されている。
だが、米ウォール・ストリート・ジャーナルは、「量より質」を重視するアップルのアプローチが奏功していると報じている。アップルは19年11月にApple TV+を開始した。このころから、同社はエンターテインメント分野における野望を膨らませたという。
多額投じ配信権取得
20年5月にはソニーの米映画子会社、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)から新作映画の配信権を7000万ドル(約85億円)で取得したと報じられた。これは、米人気俳優のトム・ハンクス氏が脚本と主演を務めた、第2次世界大戦時の軍艦が舞台の「グレイハウンド」という作品。
Apple TV+では「ザ・モーニングショー」や「テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく」といった人気番組なども配信してきた。また同社は巨匠マーティン・スコセッシ監督の新作映画に資金を拠出している。作品は、米人気俳優のレオナルド・ディカプリオ氏とロバート・デ・ニーロ氏が共演する「キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン」だ。
そして21年2月に「コーダ あいのうた」の配給権をサンダンス映画祭史上の最高額2500万ドル(約30億円)で獲得した。
また、ウォール・ストリート・ジャーナルは21年7月に、アップルが米ロサンゼルスで映画やドラマ撮影用の広大なスタジオ用地を探していると報じていた。アップルは同市などでサウンドステージと呼ばれる映画撮影用の防音スタジオを複数リースしているが、新たな拠点はそれらを補完するものになる。新拠点の敷地面積は4万6400平方メートル(東京ドーム約1個分)を超える可能性があると同紙は報じていた。