■〔シリーズ〕DX企画・推進人材のための「ビジネス発想力養成講座」はこちら

 この連載はDX企画・推進人材が身に付けるべきビジネス発想力の養成を目的としている。DXやデジタルビジネスの成功事例には「ビジネスの仕掛け」がうまく使われており、この連載ではそれが学べる。今回もビジネスの仕掛け(シェアリング、プラットフォーム、オンライン化、クラウドファンディング<購入型>など)を単体で、またはそれらを組み合わせてビジネスを発想する考え方や事例を解説していく。

 今回のテーマは「プロセス体験型消費×SNSマーケティング力」である。プロセス体験型消費とは、筆者が使っている言葉で、「最終製品ではなく、その製作過程(プロセス)などを楽しんだり、レアな体験として価値を感じたりするタイプの体験型消費(商材)」のことである。

 最終製品を魚料理とすれば料理、もっとさかのぼれば魚釣りがプロセス体験型消費商材であり、ビールとすればビール造りが、陶芸品なら陶芸自体がプロセス体験型消費になる。プロセス体験型消費は、最終製品があれば、必ずプロセスがあるという特性上、利用範囲が広い「ビジネスの仕掛け」と言える。

 もう一方の「SNSマーケティング」についてはあまり説明はいらないと思う。SNSという「友人や知人を介して、情報を拡散できる機能」を活用して、商品やサービスを多くの消費者に認知してもらい、購買につなげるマーケティング手法である。

 友人や知人を介するという特性上、信用できる人からの発信、感動できる内容、自身での体験などは拡散力が高く、マーケティング手法としても有用だが、「信用できない人からの発信」「つまらない内容」「いかにも売り込みのような内容」には効果が期待できない「ビジネスの仕掛け」である。

 例えば、「あなたは最近忙しく、ストレスがたまっている」とする。週末には久しぶりに休暇がとれるが、何をしたらよいか迷っている。テニスもゴルフも飽きたし、映画も動画サイトも良いのがない。何気なくSNSをのぞいていると大学時代のグループが盛り上がっている。

 「小田原で飲み会をする」と書いてある。近いので行ってもよいが、飲み会だけでつまらない。スルーしようとしているとダイレクトメッセージが来た。「かまぼこを作って、地ビールで頂く。先着20名」と書いてある。あなたはそれを見つめる。

 「かまぼこって作れるんだっけ?、、、」「材料って白い魚をすった?、、、」「作りたてっておいしそう、、、」。あなたは残り3人になった申込サイトに登録する、、、これが消費者から見た「プロセス体験型消費×SNSマーケティング」の事例である。

 「プロセス体験型消費×SNSマーケティング」を成功させるには、まず、プロセス体験型消費とは何か、どのようなものが向くのかを理解し、その上でSNSマーケティングとの相性を考えることが必要である。この事例を説明したい。

観光地の小さく数を売れないまんじゅう屋の息子は・・・

 ある観光地で名物のまんじゅうを製造販売する零細企業を父親から継いだ息子がいた。味は他のまんじゅう屋と遜色ないが、店も小さく数を売ることができないため、価格も下げられなかった。結果、経営状態は厳しかった。

 息子は売り上げを増やそうと考えたが良いアイデアは浮かばなかった。困った挙句、店員にアイデアを考えてもらうことにした。指名した店員は2人。1人は番頭で30年勤めているベテランのAさん、もう1人はアルバイトの高校生Bさんだった。