アップルは20年初頭、新型コロナの感染が急速に広がったことを受け、米カリフォルニア州の本社などで在宅勤務に切り替えた。その後出社再開を何度か延期していたが、22年4月前半に少なくとも週1回の出社を開始。その後週2日に移行し、5月下旬から月・火・木曜日の週3日にする計画だった。

 だが、柔軟な働き方を求める社員から猛反発を受けた。アップルの出社方針に不満を訴え、同社を去った社員もいると伝えられている。

労組結成の動き、アマゾンやスタバでも

 22年4月18日には、米国のアップル直営店の一部で従業員らが労働組合結成に向けて署名を集めていると報じられた。従業員らは、最低時給を30ドル(約3800円)に引き上げることや、福利厚生の拡充、職場の安全対策強化などを求めているという。

 これに先立つ22年4月1日、ニューヨーク市スタテン島にあるアマゾンの物流拠点で、労組結成が従業員投票による賛成多数で可決された。同様の動きは米スターバックスでも起きている。

 米労働省が22年4月29日に発表した同年1~3月期の雇用コスト指数は、前年同期比で4.5%上昇した。21年10~12月期の同4.0%から0.5ポイント高まり、2001年の統計開始以降最大の伸びとなった。ただしこの数値にインフレは考慮されていない。ウォール・ストリート・ジャーナルによるとインフレ調整後の米民間企業の賃金・給与は1年前から減少している。

 コロナ禍の在宅勤務・自宅学習の広がりを背景にアップルはスマホ「iPhone」やノートパソコン、タブレット端末の販売を伸ばし、同社の業績は過去2年で急成長した。こうした中、物価上昇や人手不足などが重なり、同社に対する賃上げ圧力が高まっている。

 21年におけるアップル従業員の報酬中央値は6万8254ドル(約869万円)だった。これに対しティム・クックCEO(最高経営責任者)はおよそ1億ドル(127億2700万円)を受け取った。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、同氏は自身の財産のほとんどを慈善活動に寄付すると話しているという。

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