また、台湾のアイゼイア・リサーチのシニアアナリスト、エディー・ハン氏は「最悪のシナリオとしてロックダウンが2カ月続けば、ペガトロンのiPhone生産に600万〜1000万台の遅れが生じる可能性がある」と指摘する。

 iPhoneの組み立てを請け負うEMS大手には、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業もある。ハン氏は「アップルがペガトロンからホンハイへの生産移管を検討する可能性もあるが、物流や設備調節の難しさといった問題があり、生産制約があるだろう」と述べている。

 ホンハイは中国南部の広東省深圳市の工場でiPhoneやタブレット端末「iPad」、パソコンなどを生産している。その深圳市でも22年3月にロックダウンが実施された。

 この時、市当局は市内や近隣の香港の住民に不可欠なエッセンシャルサービスを除いてほぼすべての事業活動を停止するよう要請した。これに伴いホンハイのほか、中国国有自動車大手、中国第一汽車集団との合弁工場を持つトヨタ自動車などが操業を一時停止した。深圳の各社工場はその後、部分的に再開されている。

ノートPC製造のコンパルも昆山に依存

 また、「生産能力を他の都市の工場に振り向ける動きが広がりそうだが、同様の封鎖措置が中国全土の都市で講じられており、物流管理体制や輸送の問題が依然として残る」とロイターは伝えている。

 このほか、アップルの主要サプライヤーの1社であるプリント基板の台湾・欣興電子(ユニマイクロン)は「昆山封鎖の影響はこれまでのところ限定的であり、当社は湖北省や台湾に生産を振り向けることが可能だ」と述べた。

 ただ、昆山のある工場オーナーはロイターに対し、「地方政府は操業再開のためのガイドラインを公表したものの、実施日を明らかにしていない」と不満を漏らしたという。

 昆山市のコロナ封鎖は、アップルだけでなく他社の製品にも影響を及ぼしそうだ。ノートパソコンを主力とする台湾EMS大手の仁宝電脳工業(コンパル)はデルとレノボの製品を生産している。トレンドフォースのチェン氏によると、コンパルはノートパソコンの約半分を昆山工場で生産しており、ロックダウンの影響を大きく受ける可能性がある。

 (参考・関連記事)「中国東部で都市封鎖、台湾企業が相次ぎ生産停止 | JDIR