アマゾン「司法長官の主張は法の目的と逆行する」

 これに対しアマゾンは、「出品業者は我々のサイトで提供する商品の価格を独自に設定している。司法長官は全く逆の考え方をしている」と反論。「当社は安価な商品を提供していることに誇りを持っている。多くの小売業者と同様に、割高なものを目玉商品として扱うことはしないし、その権利を持つはずだ。当社の価格規定は、過剰な支払いから消費者を守ることを目的にしている」と主張している。

 「司法長官の主張は、割高な商品を消費者に売り込むよう我々に要求するもので、反トラスト法の本来の目的と逆行する」とし、「当社は価格や配達の迅速さなどを考慮し、どの商品を顧客に勧めるかを決めている」とも説明した。

「最低利益協定」も問題視

 ラシーン司法長官は、アマゾンが仕入れ先と結んでいる協定も問題視している。

 アマゾンのECサイトで販売される商品は大半が出品業者によるものだが、それ以外はアマゾンが卸売業者などから直接仕入れて販売している。ラシーン司法長官は21年9月にアマゾンに対する訴えの範囲を拡大し、修正訴状を裁判所に提出した。

 この中で司法長官は、アマゾンが卸売業者に対し取引条件として「最低利益協定」を結ばせていると指摘。アマゾンの利益率が水準に満たない場合、卸売業者から「調整支払金」を徴収しているという。

 前述したとおり、アマゾンは他社のECサイトで同一商品がより安く販売されていないかをチェックしている。そして、もしより安価な商品が見つかれば、自社直販商品の価格を引き下げる。この時「調整支払金」が発生するのだという。

 ラシーン司法長官によると、この協定により卸売業者はアマゾンが直販商品を値下げすることがないよう、他社ECサイト向け卸売価格を高く設定する。「結果として、ECマーケットプレイスにおける競争が阻害され、小売価格の上昇を招く。消費者に損害をもたらし、アマゾンの市場支配力を強固にしている」(同司法長官)。ただ、この修正訴状についてもアマゾンは同様の声明を出して反論している。

アマゾン、より大きな訴訟に直面か

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、今回の訴訟提起は首都ワシントンの法律違反を問うもので、もしアマゾンが敗訴したとしても、同社の米全土事業への影響は限定的とみられている。

 だが、米グーグルや米メタ(旧フェイスブック)は、連邦法に違反したとして、米政府や複数の州政府によって繰り返し提訴されている。アマゾンも今後より大きな訴訟に直面する可能性があると、同紙は報じている。

 (参考・関連記事)「米首都ワシントン、アマゾン独禁法訴訟の範囲拡大 | JDIR