致命的な人材不足がもたらすもの

 世界最高水準といわれているアメリカでさえも、全労働者の3%*3にすぎないといわれているデジタル人材。日本にはどれくらいいるか、ご存じだろうか。日本は1%である。3%と1%の差なら、追い付けるのではないかという楽観論者の声が聞こえてきそうだ。

 そのような期待も頭の隅を横切るが、アメリカの全労働者は日本とカウントの仕方が異なるがおおよそ1億5800万人と言われ、そのうちの470万人がデジタル人材といわれる人たちだ。日本は全労働者5560万人の1%であるから、55万人前後である。これは圧倒的な差を付けられている。

 さらにデジタル人材を育成するソフトウエア関連プログラムを開講している大学数はアメリカで117校、日本は29校である。この数字を見ただけでも、日本の前途は明るいとはいえない。近年、国を挙げてデジタル人材の育成に取り組んでいるが、「今ここで名だたるデジタル人材の名前を挙げよ!」と言われても、たった数十人の名前が挙がる程度である。

 これでは、DXそのものが進まない。このままだと競合他社、もしくはレガシーシステムをもたない新興企業に負けることになる。テスラの動きはトヨタの危機感を促し、DX時代のCASE*4といった技術革新によって同社のクルマの概念さえも変えた。新しい時代に合わせたビジネスモデルの転換を迫ったのである。VUCA時代と言われる中で、DXは企業存続の生命線でもあることは間違いない。

*3 ソフトウエアエンジニア、データエンジニア、開発者といったエンジニアリング関連の人材、コンサルタント、プロジェクトマネジャーなどを除く
*4 Connected、Autonomous/Automated、Shared、Electricの頭文字をつなげたもので、新しい領域での技術革新がクルマ、ひいてはモビリティ社会の在り方を変えていくと、トヨタは定義