2025年の崖を飛び越えられるか

 「2025年の崖」という言葉を聞いたことがある方も多いだろう。これは、レガシーシステムを放置したままだと、4年後には「データの損失」やシステムダウンなどの「システム障がい」が発生することを指している。

 この「崖」というショッキングな言葉に、多くの関係者が危機感を抱いた。経済産業省の試算によると、この問題を放置した場合のトラブル数は現在の3倍、経済損失は年当たり最大12兆円とされている*1。「いまや国内で約2000社が導入しているSAP ERPの保守サービスの終了*2と、IT人材の不足という根深い問題がある」と指摘している。

 これらのことから、DXというと「基幹システムの刷新とITの分かる人材を活用すればよい」と思われがちである。だが、決して「DX=高度なIT活用」ではない。こうした考えを持ち続けていては、間違いなく「負けパターン」に陥る。

 2017年に経済産業省が出した報告書の冒頭では、DXの未来について「あらゆる産業において、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネスモデルを展開する新規参集者が登場し、ゲームチェンジが起きつつある」と指摘している。つまり、最新のデジタル技術を活用してのビジネスの変革や業務プロセスの刷新、さらにいえばビジネスの創出が求められているのだ。企業は生き残りをかけたDX推進を進める必要がある。

 だが、ここには大きな問題点が存在する。今ある老朽化しつつある既存のITシステムと、新たなビジネスプロセスをつくり出していくためには、現場を巻き込んだ調整と刷新が複雑に絡み合う。全社を巻き込む変革であるため非常に難問であり、経営者自身が関わるべき課題なのである。

*1 経済産業省『DX推進ガイドライン』平成30年12月
*2 現在は、2027年まで保守期限を延長すると発表されている