写真は北京のアップルストア(写真:AP/アフロ)

 米アップルが4月に導入したアプリの端末情報追跡制限によって、広告を主力事業とするインターネット企業の業績に明暗が分かれている。

アップル規制、フェイスブック伸び鈍化

 米グーグルの持ち株会社、米アルファベットが10月26日に発表した2021年7~9月期決算は、売上高が前年同期比41%増の651億1800万ドル(約7兆3900億円)、純利益が同68%増の189億3600万ドル(約2兆1500億円)で、いずれも四半期として過去最高を更新した。

 一方、フェイスブック(FB)が同25日に発表した21年7~9月期決算は売上高が前年同期比35%増の290億1000万ドル(約3兆2900億円)、純利益が同17%増の91億9400万ドル(約1兆400億円)。主力のネット広告は引き続き伸びたものの、売上高の増加率は4~6月期の56%から鈍化した。7~9月期の売上高増加率は20年10~12月期以降で最も低い。

 フェイスブックは、アップルによるプライバシー保護のための広告規制の影響を受けた。同社のシェリル・サンドバーグCOO(最高執行責任者)は決算説明会で、「アップルの規制がなければ売上高はもっと伸びていた。当社と当社の広告主は今後も影響を受けるだろう」と説明した。

 アップルは4月からターゲティング広告を導入するアプリ運営会社に対し、個々のアプリごとに利用者の同意を求めるよう義務付けた。ターゲティング広告の配信時に必要となる端末固有の広告用識別子「IDFA(Identifier for Advertisers)」をアプリが取得する際、ポップアップ画面を出して利用者に許可を求めるようにした。

 米調査会社のフラリーによると、4月時点でユーザーがアプリに広告用識別子の取得を許可した比率はわずか16%だった。

 フェイスブックや写真共有アプリの「スナップチャット」などで表示されるターゲティング広告はこれまで、複数の企業が運営するアプリやウェブサイトを横断して利用者の行動を追跡し、対象者の絞り込み精度を高めてきた。アップル規制でそれができにくくなり、効果的な広告配信が困難になった。

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、十数社の電子商取引(EC)企業は、アップルがこの制限を実施してから、これまでと同じ販売を達成するためにより多くの広告費が必要になったと述べている。また、EC企業は、広告が実際の購入に結びついたかを知るためのデータが乏しくなったとも述べている。EC企業118社を対象に21年7月に行った調査では、62%がフェイスブックへの広告支出を減らしたと回答した。