企業と顧客の関係をポイントでより密にする

 STOCK POINTでは、ロイヤリティプログラムをスタートしようとしている。証券会社のマーケティングという直接的な目的から、さらに一歩、次の段階に進むイメージだ。こちらも、一般の利用者の意識・行動変容からつながることだが、いわゆるB2Cで商品を展開するような企業にとっての、新たなファンマーケティングサービスだ。

土屋 例えば、A社の飲料を買ったら、A社のStockPointがついてくるというもの。そうすると、次に飲料を買うときも他社のブランドではなくて、A社の飲料を買おうというようになる。すると、どんどんA社のStockPointが貯まっていって、いつのまにかA社の1株分になる。それを株に替えて、A社の株主になる。それでまたA社の商品を買う、そういう流れができるのではないかと考えています。

 今、企業が発行しているポイントの大半はマーケティング販促費で発行されていますが、発行したポイントは、自社以外の場所で割引に使われたりするなど、必ずしも自社のために戻ってきているわけではないんです。まあ、TポイントやPontaポイントなど、さまざまな買い物やサービスで付与されるいわゆる共通ポイントであればいいんですが。

 じゃあ、ポイントを振り出した企業のためになっていない、そこに戻ってきていないポイントが結構、世の中にあるのであれば、それなら、その会社の商品を買ったりサービスを利用したらその会社のポイントが貯まるというふうにしていけば、個人株主を増やしていくことにもつながるし、その会社にとって、より効果的なマーケティング施策になります。そういう、株式を擬似的に使った新しいマーケティングサービスができるのではないかと思っています。

 既に、StockPointのユーザーの中に「いつもイオンで買い物をして、イオンにお世話になっているからイオンのStockPointを持っている」というような人も結構、多い。それだけ愛着を持って買ってくれている顧客へのポイントなら企業側も喜んでつけるはずだ。身近な会社、好きな会社、いつも使っているサービスに対するロイヤリティを高めるためのポイント運用、これも新しいポイント経済圏の1つになる可能性があると土屋氏は言う。

土屋 私たちが事業を始めた最初の頃は、企業さんを回って説明しても「面白いこと考えるね、でも本当にそんなことできるの?」といわれたんですが、今は、やっとその土壌が育ってきたということかなと思っています。

 ポイントをお客さまに振り出している会社として、多くの場合、なぜポイントを発行しているかというと、たぶんマーケティング費用としてコストをかけて発行していたり、その目的に応じて違うとは思います。ただ、いろいろな目的でポイントを発行しているとはいえ、最終的な目的としてはお客さまに喜んでいただこうとか、お客さまに楽しんでもらいたいということが大きいので、そういう目的のための1つの選択肢としてポイント運用に興味がありますという会社さんは結構、多いような気がします。

 従来のポイント活用というと、企業がマーケティングのためにデータ収集(活用)する、あるいは顧客の囲い込みという目的が多いイメージだ。一時は、購入など行動データが吸い上げられ、どう使われるか分からないと、大手のポイントプログラムを毛嫌いする風潮も世の中にはあったくらい。それだけ、一般の利用者にとってのメリットを打ち出すことが難しく、企業にとっても直接的な利益を生み出すことが難しい領域だが、投資/運用という要素が加わることで、新たな価値を生み出し始めたということなのだろう。

 最後に、ポイント活用という領域の今後についてお聞きした。

土屋 動きが激しい分、エキサイティングで、それだけ、いろいろな可能性があります。いろいろな方たちがいろいろなサービスを考えて、どんどん広げていっている。STOCK POINTもその中の1つでありたいし、もっといろいろなことができると思っています。今、準備しているロイヤリティプログラムもそうですし、現在、さまざまな業界の方と話を進めています。これからも、ポイント経済の新しい可能性を追求していきたい。新しい体験を作り出していきたいと考えています。