フェイスブック ロゴイメージ(写真:當舎慎悟/アフロ)

 米フェイスブックが欧州で今後5年間に1万人を新規採用する計画だと、米CNBCロイターが10月18日までに報じた。「メタバース」と呼ばれる仮想現実空間を構築することが目的で、同社にとって新サービス開発のための重要な一歩になるという。

 高度な技術を持つエンジニアを欧州連合(EU)域内で雇うとしている。ドイツやフランス、イタリア、スペイン、ポーランド、オランダ、アイルランドで採用活動を始める計画だという。ニック・クレッグ渉外担当副社長などの幹部は、「数百万社の企業が当社のアプリやツールを利用するなど、欧州は当社の成功にとって重要な部分を占める」と述べた。今後、各政府と協力して、適切な人材や市場を探し、事業計画を進めるとしている。

CEO「次のコンピューター基盤を構築」

 同社は2021年7月、メタバースに取り組む事業部門を設置。マーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は「将来は当社をSNS企業としてだけでなく、メタバース企業として見てもらえるようにする」と述べるなど、同事業の構想を示していた。

 「次のコンピューター基盤を構築するためにメタバースを実現させる」(ザッカーバーグCEO)との目標を掲げている。21年8月に同社のVR(仮想現実)端末「Oculus Quest 2(オキュラス・クエスト2)」を利用する新サービス「Horizon Workrooms(ホライゾン・ワークルーム)」を約20の国・地域で開始。アバター(CGで作る分身)を通じて、異なる場所にいる利用者同士が同じ仮想空間内で会議などを開催できるようにした。

 21年9月には、メタバース構築に向けて5000万ドル(約57億円)を投じる計画を発表。さらに21年10月にはメタバース内のコンテンツなどを制作するクリエーターを支援するために1000万ドル(約11億4000万円)規模の基金を設立することも明らかにした。

立法府や当局から圧力

 ただ、フェイスブックに対しては米欧の立法府や当局からの圧力が強まっている。今回の欧州でのメタバース開発計画は、同社にとって厳しいタイミングで発表されたと、CNBCは報じている。

 現在、同社は批判の真っただ中にあるという。発端は、フェイスブックで誤情報対策のプロダクトマネジャーを務め、今年5月に退職したフランシス・ホーゲン氏だった。同氏は米ウォール・ストリート・ジャーナルに内部文書を提供。それを基に一連の記事が公開され、波紋が広がった。

 内容は、「フェイスブックが児童保護などに関し自社に不都合な調査結果を隠していた」などとされるものだ。ホーゲン氏は米議会上院の商業科学運輸委員会が21年10月5日に開いた公聴会で証言。「幹部はフェイスブックとインスタグラムを安全にする方法を知っていたが必要な改良を行わなかった。彼らは利用者よりも、天文学的な利益を優先した」などと批判し、「立法府による措置が必要だ」などと訴えた。

 フェイスブックはこれに反論。告発者であるホーゲン氏の知識の範囲に疑問を呈しており、両者の主張は真っ向から対立している。ただ、この問題は同社が開発と雇用の拡大を進める欧州市場にも飛び火しそうだと指摘されている。

内部告発者、欧州議会でも証言

 CNBCによると、ホーゲン氏と、もう1人の内部告発者のソフィー・チャン氏は10月に英議会で証言する予定。ホーゲン氏は欧州議会にも呼ばれており、11月に開催される公聴会で証言するという。

 欧州委員会は20年12月にデジタル規制法案を公表しており、フェイスブックのような米テック大手に対する規制強化を狙っている。そのうちの1つ「デジタルサービス法」には、ホーゲン氏が主張する「透明性の確保」が盛り込まれている。サービスやアルゴリズム、コンテンツモデレーション(掲載内容のチェックと削除)などの手法に関する詳細の開示が義務付けられる可能性があると言われている。

 (参考・関連記事)「フェイスブックvs.内部告発者、対立長期化の兆し | JDIR