DXを正しく理解し、経営ボードの在り方を本質的に変革する

 7つの鍵の中でも、最も重要なのが「戦略」となる。岩渕氏はその前提として、DXに関する正しい理解を持つ必要性を説く。ポイントは5点ある。

「1点目は、DXとはビジネスモデルそのもの、働き方自体を変革することだと肝に銘じてください。2点目、デジタル戦略は経営戦略やビジネス戦略と一体となって策定するものだということ。3点目、世の中の液状化する動きに合わせてかなりのスピードで見直しながら策定する必要があること。

 4点目、DXのゴールは顧客や社員が求めている価値を求められているタイミングで最大化すること。5点目は、CEOを先頭に首脳陣がリーダーシップを発揮して率先して取り組むこと。これらをしっかり理解するべきです」(岩渕氏)

 そして、この理解を実際の意思決定のプロセスに移していくわけだが、「経営のボードの在り方を本質的に変えてください。経営会議の下に何層も会議体がある構造ではなく、例えば、『デジタルボード』を中心に経営委員会と各イニシアチブがつながるような、集約化・シンプル化した形で意思決定をすることです。

 さらに、今後はオペレーションの在り方が変わり、他者と組んで仕事をしていく形になっていきます。社内のクロスファンクションや、社外取締役を刷新してデジタルの分かる人を入れるなど、意思決定の対応が必要になります。

 また、デジタル化で財務データはもちろん、日々のオペレーションのデータも出てくるので、それを見ながらシンプルで速い意思決定を実行していくことです。計画の数字も定量目標として決め、達成に向けて具体的にモニタリングしていくと、リアルタイムに近い形の意思決定に変革できます」(岩渕氏)

 上図は、岩渕氏が提示するDXの実効性を担保するための6つの要素だ。これらを連動させることが必要だという。

 起点になるのは「戦略&ポートフォリオ」。「まずDXで優先してやっていく事業と目標を定め、会社として意志を込める。これに関連して、ロードマップをつくる、財務インパクトを定義する。実際のアクションとして担当者を決め、短いサイクルで振り返る。これらが定常業務になれば、全社の生産性も10%、20%と上がり、働き方が底上げされます」(岩渕氏)

いち早く顧客、従業員に価値提供するマトリクス組織が必要

 7つの鍵の2、3番目、ガバナンスと組織について高部氏は「人材および投資の最適化をどうスピーディーに行うか」という点が、競争優位の源泉となると話す。

「スタートアップ企業は、例えば5人、10人の組織で役員もコーポレート機能もファイナンスも全て内包しており、非常に迅速に意思決定できます。一方、大企業では意思決定の意識合わせ、関係部署との調整、縦のレポーティングや、コンプライアンスやファイナンスといった横串のレビューなど、さまざまなプロセス、ステップを経る必要があります。

 しかし、消費者(カスタマー)の観点からすれば、サービスを提供する企業の規模は関係のないこと。消費者にとっていかに面白いもの、意味のあるものを提供してくれるのかが競争のポイントになります」(高部氏)

 つまり、より早く意味のあるものを提供し、期待する成果がなければすぐに直す。こうした戦い方ができなければビジネスに勝てない。「このような前提の中で競争優位を実現するには、マトリクスのような組織がよい」と高部氏は話す。

「これは上の右図のような、ある顧客のニーズを満たしていくと結果が得られる、という組織の組み方のことです。この横のマトリクスで社員の体験を向上させます。専門的なスキルを身に付けたり、キャリア形成の支援をするといった目的を持つユニットを考えていきます」(高部氏)

 実際、このようなマトリクス組織が、一部の企業で採用され始めているという。顧客と従業員をどちらも欠かせないステークホルダーとして、そこに向かって価値をどう提供するかを重視する機能別の組織が増えているわけだ。