NTTコミュニケーションズでは以前から「風土・意識」「制度・ルール」「環境・ツール」の3つの視点から“三位一体”でワークスタイル変革に取り組んできた。2018年にはICT環境とツールを一新。セキュリティと利便性の両立を実現し、従業員から高い満足度を得ている。同社がどのようにICT環境とツールの刷新に取り組んできたのか。そこではどんな成果が得られているのだろうか。責任者としてプロジェクトをリードしてきたデジタル改革推進部 情報システム部門 担当部長の豊嶋 剛司 氏に話を聞いた。

ICT環境とツールが働き方改革の足枷に

 世界有数の通信事業者であるNTTコミュニケーションズにとってワークスタイル変革は「『個人の「ライフ」の充実があっての「ワーク」の充実』を基本理念に、カルチャーを変え、業務や経営のよりよい姿を探していくこと」である。そのために「風土・意識」「制度・ルール」「環境・ツール」という3つのポイントから“三位一体”での変革を推進している。

 働き方改革の全社浸透を目的として、経営層が継続的にメッセージ発信を行い、自ら率先した在宅勤務を実践した。また、リモートワークをサポートするために、サテライトオフィスを導入した。勤務体系においてもコアタイムなしのスーパーフレックスと分断勤務の組み合わせにより、「一人ひとりの多様性に応じた働き方」をゴールに変革を推進してきた。

 豊嶋氏は「従業員からは柔軟に働きやすい風土や制度を求められており、それを支えるICT環境やツールが必要でした。しかし、以前はその要求に十分応えられる状況にはなっていませんでした」と語る。

NTTコミュニケーションズ株式会社 デジタル改革推進部 情報システム部門 担当部長 豊嶋 剛司 氏

 同社では、2018年まで社内システムは、すべてのデータを閉じられた環境であるオンプレミス環境に格納する境界防御の考え方を採用していた。

 会社情報を外部に持ち出せないため、画面転送型のシンクライアントを用いて、会社情報をオンプレミス環境に格納しながら、社内外でも業務ができるように社内外問わずシンクライアント端末を使用していた。「情報システム部門の立場からすると、セキュリティ面では優れた仕組みだが、実際に使用する従業員からは使い勝手について大きな不満が出ていました」と豊嶋氏は語る。これではセキュリティレベルを確保できても、ネットワーク環境の悪い場所において業務ができないことになる。

 また、ツールという面でも課題はあった。メールやグループウェア、チャットなどのコミュニケーションツールがそれぞれ別個に導入されていたのである。「従業員は複数のアプリケーションを並行して立ち上げて切り替えながら利用しており、データ共有やコミュニケーションにも苦労していました」と豊嶋氏は話す。