デルタ株が猛威を振るう中、人々の安全と経済をどう両立させるかが、各国で重い課題となっている。最適な解はあるのか? 日本銀行で長く経済分析に携わった元局長の山岡浩巳氏が解説する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第50回。

 COVID-19の感染の脅威は、「デルタ株」の拡大とともに続いています。この中で、「感染防止と経済活動のどちらを優先すべきか」に関する論争も終わる気配がありません。

 もちろん、単純な答えは「どちらも大事」なのですが、これは「役に立つ答え」にはなりません。経済活動は人と人との関わり合いから生まれるものですので、感染防止と経済活動との間にはトレードオフが避けられません。一人ひとりが部屋に閉じこもり絶対に他人と接触しなければ、感染は防げますが経済活動も維持できなくなります。一方、人と人との接触に何の制約もかけなければ、経済活動は維持できても感染は拡がります。

 最適な解はその中間のどこかにあるのでしょうが、その場所を探り当てるのは至難の業です。人命という本質的に“Priceless”なものと経済価値との比較には、どうしても各人の価値観が反映されますし、日々刻々変化する状況にも大きく左右されるからです。