「こんないいことがある」とメリットを体験すれば行動は変わる

 そうした中、この会社で2年間ほとんど使われていなかった社内SNSが、活気を見せ始めます。コメントや「いいね!」の数が跳ね上がったのです。社内の意識や行動の変化がSNSに現れてきたのです。思わぬところに具体的な効果がほんの少し見えて、勇気が湧いてきました。

 ビジョンや変革の必要性を語る言葉よりも、変革によって「実際にこんないいことがある」ということを体験してもらう方が、人は行動を変えてくれるようです。そうした確信を持ってさまざまな行動を起こしました。たくさんありますが、ここでは3つをご紹介します。

 1つ目として、社内に数百種類もあった受注書のフォーマットを統合しました。お客さまにしても、何かやるたびに違う受注書を書かなくてはならず、大変な手間だったのです。

 2つ目は、研修の中で重要顧客を訪問し、お客さまが必要とする成果や価値に焦点を当てて提案することで、新規ビジネスを発掘できた取り組みです。

 3つ目に、デマンドジェネレーションの運用を開始しました。見込み顧客がお客さまになり、ファンになり、リピートオーダー、推薦紹介してもらえる仕組みを、自分たちで回し始めたわけです。こうして、「実際にお客さまの価値につながるんだ」という体験を重ねることで、社員の意識と行動がどんどん変わっていったのです。

 このプロジェクトが成功したかどうかを評価するのは、この会社のお客さまですから、ここでは私たちは成否を評価できません。皆さんもまず、自分のお客さまに興味を持ってください。お客さまの必要とする価値や成果を知った上で行動してください。行動に移さない限り、何も結果は出ません。失敗を恐れず、失敗から学べばいいのです。