マーケティングをDNAに組み込むプロジェクト
では、これをもっと大きな会社の全体へ展開するにはどうすればいいのか。事例をご紹介します。要点は7つありますが、今回は下の図の赤字の部分だけ取り上げます。
このケースは、1000人ほどの会社で「マーケティングをDNAに組み込む」というプロジェクトです。初めに、プロジェクトを先導するリーダー13人を経営陣に選んでもらいました。各部署から集まった精鋭です。しかし、ここに最初のハードルがありました。精鋭は通常業務が忙しく、一堂に会することが困難だったのです。
そこで、スマートフォンアプリで資料を読めるようにし、読後に必ずコメントを付けてもらうことにしました。全140話、1日5話ほどを28日間でこなすボリュームです。そして4週間もの間、資料を読むことと、オンライン上で議論することを行っていきました。
そうしていくうちに精鋭の意識が徐々に変わっていったのか、その後、「リアルでワークアウト(GEが開発した組織文化の変革メソッドのこと)しよう」と言うと、今度はすんなり集まることができました。
そこから、活動を社内SNSで広げようとか、全社でキックオフしようとか、さまざまな行動を起こしていきます。しかし、上司の承認や社内ルールといった障壁の前に、ことごとく撃沈します。十数人の変革エバンジェリストだけでは足りなかったのです。
そこで、自薦でやりたいという人に手を挙げてもらい、プロジェクトに参加してもらいました。さらに部下を持つマネージャーたちに声を掛けていきます。こうして、参加人数はずいぶんと増えました。しかし、人数が増えてもうまくいきませんでした。
「全社でやるのは賛成だけど、うちの部署でやるのは難しい」といった総論賛成・各論反対の抵抗勢力が出てくるのです。プロジェクトの音頭を取っていたのは社長ですが、たとえ社長の言うことでも、他人からの言葉では人間は変わらないのです。