DCashは、東カリブ中央銀行から、許可を受けた銀行(licensed bank)やノンバンクに対して発行され、これら銀行やノンバンクがスマートフォンアプリによるウォレットを通じて個人や企業に提供します。DCashは、個人間での送金や、商店などでの買い物の支払いに利用できます。また、参加している4カ国の間でのクロスボーダーでの送金にも使えます。なお、DCashには現金同様、利子はつきません。
個人がDCashのウォレットを開設するには、銀行口座番号か、あるいはパスポートや運転免許証など政府が発行する写真付きIDが必要です。なお、銀行だけでなく、東カリブ中央銀行が“DCash Agents”(DCash代理店)として選定したノンバンクもウォレットを提供し、これにより、銀行口座を持っていない人々もデジタル決済手段を使えるようになることが期待されています。個人用のウォレットには、個人の顧客確認義務(Know Your Customer, KYC)や反マネーローンダリング規制に応じた金額制限が課されます。
また、DCashの企業向けウォレットは、Class A、ClassB、ClassCの3種類があります。このうち、ClassAの残高上限は30万東カリブ・ドル(約1200万円)、ClassBは15万東カリブ・ドル(約600万円)、ClassCは2万5000東カリブ・ドル(約100万円)とされています。
カリブ諸国の積極姿勢の背景
このように、中央銀行デジタル通貨を世界で初めて公式に発行したバハマに続き、今回、東カリブ諸国4カ国が試験的に発行するなど、デジタル通貨に関するカリブ海の国々の積極姿勢が目立っています。これはなぜでしょうか。
まず、カリブ諸国は米国との結びつきが強く、ほとんどの通貨がもともと米ドルにペッグされていることが挙げられます。このため、もともと金融政策には自律性はなく、デジタル通貨発行による金融政策への影響を考える必要がありませんでした。