「自分ごと」として活動を展開する

 SDGsの活動には、会社内で行うフォーマルな活動と、社員一人一人が生活の中で行うインフォーマルな活動がある。フォーマルとインフォーマルの活動が一体となれば、より広く高いレベルの持続可能性につながるはずだ。

 会社内のフォーマルな活動とは、先にも述べたマテリアリティの決定やワークショップ、実行計画の遂行などである。ここに自主性・自立性を持たせ、いわば「自分ごと」として自ら行動するようにしたい。SDGsを業務上の活動だけにとどめておくことはない。経営や社会に本質的なサステナビリティを求めるのであれば、社員一人一人の生活のインフォーマルな活動も大切になる。

 ひと昔前、「コーポレート・シチズン(Corporate citizen-ship)」という言葉が多用された。その考え方は、企業に勤める人も市民社会の一員、「企業市民」(コーポレート・シチズン)であるとし、企業存続の基盤である地域社会やコミュニティーの健全な発展に貢献すること、そのための行動を推奨、実行していくことを意味する。

 すなわち、社内だけでなく、地域社会でも社員がサステナビリティな社会やSDGsの実現に向けて活動することが求められてくるわけで、そうすることで、フォーマルとインフォーマルの両軸で活動が面として広がり、本質的な効果も期待できるはずだ。

 インフォーマルな活動により、SDGsの意義が再確認できるとともに、本人に貢献感が湧き、活動を「自分ごと」として捉えるようになる。同時に地域社会での存在感も高まり、フォーマルでも「自分ごと」で行動するようになり、結果的に企業の価値やイメージの向上にもつながる。

 会社のフォーマルな活動の中で育成される人材(考え方・行動そのものがSGDsに沿う人材)が、インフォーマルな地域社会への貢献を通じ、今度は「自分ごと」としてフォーマルな活動も促進していく——このような「SDGsサイクル」を回していく人材が、これからの「ありたい社員」像と言える。

 SDGsの活動そのものがサステナブルになるよう、体制・進め方、社員の人材像などを述べた。実効性の高い本質的な活動にするには、もっと工夫の余地があるはずだ。われわれも日々、考えを巡らしているところである。

コンサルタント 石田秀夫(いしだ ひでお)

取締役 生産コンサルティング事業本部 本部長 
シニア・コンサルタント

大手自動車メーカーに入社し、エンジニアとして実務を経験。生産部門および開発設計部門のシームレスな収益改善・体質改善活動を支援。事業戦略・商品戦略・技術戦略・知財戦略を組み合わせた「マネできない ものづくり戦略」を提唱し、次世代ものづくり/スマートファクトリー化推進のコンサルティングに従事している。