もはや「プロジェクトX」的価値観は通用しない時代となった

 では、日本企業でPMはどの程度成功しているのだろうか。プロジェクトにはシステム開発や研究開発、社内改革などさまざまなものがあるが、高橋氏によれば、新規プロジェクト故に成功率は低くなる傾向にあるものの、その成功率はおよそ3割程度。そして、意外にも少人数のベンチャーや新興企業は成功率が高く、大企業ほどその確率が低くなるという。

「いわゆる歴史と伝統があり、重厚長大で組織がしっかりした大企業ほどPMがうまく機能していないのです。それは組織が硬直化して、縦割りなど組織の壁に阻まれている上、プロジェクトマネージャーも育っていないからです。その一方で、リクルートやソニーといった企業は大組織でありながら、いまだにベンチャー精神を持っているが故にPMの成功率は高い。そうしたPMが成功する企業に共通しているのは、失敗を恐れず、失敗を積み重ねて成功に導いていることです。つまり、失敗から学んでいるのです。しかし、多くの大企業では失敗を許さない体質がある。しかも自分たちの組織のことにしか関心がなく、お客さま視点もない。結局は組織文化が大きく左右しているのです」

 今はやりのオープンソースによる企業提携型プロジェクトにおいても、互いの企業の組織文化がぶつかり合い、時に頓挫するケースも少なくない。

「プロジェクトの進め方が企業同士では水と油の場合があります。例えば、スケジュール1つとっても、厳守するか先延ばしを許容するのか。スケジュールの捉え方が違うだけでPMの成功率は大きく変わってきます。ちなみにPMの考え方ではフェーズによってスケジュールが変わることを前提としています。そのため、リスク対策として回避策や予防策、かつリスクが顕在化した場合のプランも事前に準備しています。実はこうした当たり前のことが日本企業はできていないのです。それはプロジェクト立案に際して、見通しを修正できるように互いに議論し合う雰囲気が社内にないからです。今も心意気だけで大プロジェクトを成功させようとする昭和的な価値観が顔を出すときがあります。しかし、もはや『プロジェクトX』的な価値観が通用する時代ではなくなってきているのです」

PMがうまく機能する企業は失敗から学ぶ体質を持っている

 大企業でPMがうまく機能しない理由は、それだけではない。新規プロジェクトを進める人材をライン上で育成し、きちんと評価する仕組みがないという問題も指摘される。

「日本企業はヒエラルキーの組織になっていて、それぞれ現業を抱えています。そこで大きな問題になるのが、プロジェクトを成功させても評価されにくい人事評価制度になっていることです。成功しても評価されず、もし失敗すれば、大きな減点がついてしまう。だから、新規プロジェクト自体に関わろうとしない社員も多くなるのです。さらに、システム開発プロジェクトの場合、発注側がプロジェクトに投入する人の比率は多くてプロジェクトメンバーの3割程度。そのため、結果的にプロジェクトを管理・運用できるプロジェクトマネージャーが育たず、会社の中だけで通用する偏ったスキルの社員ばかりが育ってしまう。リスクがあっても、外部の意見も聞かずに、自分たちだけで何とかしようとする。そうした組織文化が硬直化していくと隠ぺい体質を生んでしまうのです」

 いわば、PMは組織文化や企業体質によってうまくいくかどうかが決まってしまうということが言えるだろう。PMがうまく機能する企業は、失敗から学ぶ体質があり、うまく機能していない企業では、失敗を許さないという硬直化した組織文化を持っているわけだ。