自社の強みを言語化し、そこに新たな事業戦略を描く

 最後に、印刷業界がこれから新たな未来を描いていく上でのアドバイスをもらった。

「印刷は、情報を伝える媒体として極めて重要なツールです。印刷自体がなくなることは考えづらいからこそ、『いかにして付加価値を上げるか』が重要なポイントとなるでしょう。自社の強みをしっかり言語化して、今後の方向性を見出していくことが大切だと感じています」(久保氏)

「他の業界に比べるとデジタル化が遅れてはいますが、下地は十分整っています。今後の取り組み次第では、十分挽回が可能なはずです。コロナ禍ではデジタル印刷機等のまとまった設備投資は難しいかもしれません。まずはワークフロー自動化・オンライン校正や前述のデジタルツール活用など、比較的投資しやすい領域から着手して、デジタルをうまく活用し、変化のきっかけとしていただければと思います」(石塚氏)

 財務面の安定は、そのまま今後の戦略オプションの選択肢の多さにつながる。変革を進めるならば、そうした多彩な選択肢が残されている今が好機と言えるのではないか。そして、社会や経済環境の変化が大きい時だからこそ、自社の強みを言語化し、未来を見据えた次の事業戦略を構築し実践すべきだろう。