データに関する「権利」とは
通常の財についても、その「所有権」の内容は、「自由に使える」「売れる」「担保化できる」などさまざまです。データについても、「利用を止められるか」「使い方の是正を要求できるか」「データを返してもらうことができるか」「誤ったデータの修正を要求できるか」など、広範な論点が考えられます。
これらの論点は、人々が生活の中で日々直面するものになっています。刻々画面に現れるネット広告が、自分のどのような購買履歴データをもとに配信されているのかわからない。では、広告を止めることができるか、広告配信のもとになっている自分の購買履歴データを使うなと言えるか、さらにデータを消去してくれと言えるか、などの論点が出てくるわけです。
医療データにおけるエストニアの事例
この問題が最も先鋭的な形で表れるのが、医療データです。医療データは非常にセンシティブな個人情報ですが、同時に、これを集計し活用することは、適切な医療の実施や健康的な生活の推進、さらに感染症対策などに必要不可欠です。加えて、患者が病院を転々としてきているような場合、過去、どのような診断や処方を受けてきたのかを把握することは、適切な診断を行う上で重要となります。