この中で、最近のデジタル技術は、「投資したお金がESG、SDGsと整合的な使われ方をしているか」のトラッキングを可能とし、ESG・SDGs投資市場の振興に寄与します。いわば、「責任ある投資」(Responsible Invesment)を行いやすくするものです。
デジタル技術と金融の民主化
以上のように、新しいデジタル技術が金融にもたらし得る大きなメリットは、「金融の民主化」、すなわち、自分のお金が自分の意図する先に届き、望む用途に使われるようトラッキングできる点です。これは、金融や証券市場に新たな発展の可能性をもたらします。
同時に、“Green Washing”同様、新しい技術が「こけおどし」の宣伝文句に使われないように注意しなければなりません。2008年のリーマン・ショックは、複雑な証券化技術に対する過度の期待が一因となりました。また、数年前のICO(Initial Coin Offering、暗号資産の新規発行による資金調達)のブームでも、「環境にやさしいコイン」といった宣伝文句が濫用されるなど、同様の問題が生じました。
複雑な証券化スキームを使ったところで、原資産のリスクそのものを消せるわけではないように、ブロックチェーンやAIを使ったからと言って、ハイリスク・ローリターンの投資がローリスク・ハイリターンになるわけではありません。投資家は、一見華やかなIT用語に惑わされることなく、プロジェクトの目的、そして、そのリスクとリターンを慎重に判断していく必要があります。
ブロックチェーンや分散型台帳技術というと、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)のように、それ自体が何かお金を増やしてくれるような期待を生みがちでした。しかし、これらの技術の真の価値は、新しい種類のインフラを構築できる可能性にあります。筆者が座長を務める「デジタル通貨フォーラム」でも、セキュリティトークンや電力取引、これらとデジタル通貨との決済は、有望分野の一つです。地に足のついた検討を進め、インフラ整備と金融の民主化に貢献できればと思います。