「テレビCMはまとまった費用がかかる一方で、費用対効果がはっきりしない」という、これまでの一般的な常識が変わろうとしている。制作費までを含めた広告費が、宣伝効果に連動して変わる“成果連動型”サービスがスタートした。

 目標設定の段階で合意した成果目標に達しない場合は、CM制作費をサービス側が負担することで、効果に応じた費用を顧客(広告主)が払えばいいようにする。

 サービスはネット印刷で知られるラクスルが、ADKホールディングス傘下のマーケティング事業会社ADKマーケティング・ソリューションズ(以下ADK)と協働して行うもので、2020年12月に発表した。

 ラクスルは、テレビCMの効果を解析しながら広告費の最適化を図るサービス「ノバセル」を2020年4月に始めた。広告主企業のWebサイトへのアクセス数、スマートフォンアプリのダウンロード数、商品やサービスの注文数など、テレビCMが流れた後のデータの変化を解析する。このように効果を可視化し、テレビCMの費用対効果を高める。

 このサービスに、ADKの持つテレビCMの放送枠の買い付け力を付加する形でサービスを運営する。加えて、ラクスルとADKがそれぞれ蓄積しているテレビ番組ごとの視聴者の嗜好など、番組ごとの特性を活用。宣伝効果を引き出しやすい時間帯や番組にテレビCMを優先的に出稿するといった運用を行う。

広告効果を解析して費用対効果を2倍に

 広告市場では2019年にテレビCMの広告費をインターネット広告が上回った。しかし、総務省の統計によると、30歳代以上ではまだ、テレビをリアルタイムで視聴している時間のほうがインターネットを閲覧する時間より長い。そのため「テレビCMとインターネット広告のどちらか一方ではなく、両方を正しく使いこなすことが、今後のマーケティングでは重要になってくる」とラクスルの田部正樹取締役CMOは強調する。

 インターネット広告では、掲載媒体の特性や反響の大きさに応じてキャッチコピーやデザインを変えて宣伝効果を最大化するデジタルマーケティングが浸透している。だが、テレビCMではこのようなマーケティングは難易度が高いとされてきた。「どこのテレビ局のどの番組でテレビCMが流れたかまでは分かるが、それが何時何分だったのかまでは把握できないために効果を正確にとらえにくいことが大きな要因」(田部取締役)である。