ドアの解錠が顔認識でもできるようになる(ビットキー提供)

 スマートフォン(スマホ)などを使ってドアを解錠する「デジタルキー」製品を開発しているのが、スタートアップのビットキーだ。同社は、住宅の玄関だけでなく、マンションのエントランスや宅配ボックス、オフィスのエントランスや会議室など、幅広い用途に応用し始めている。

 同社の江尻祐樹CEO(写真1)は、「扉の設置数は国内の人口やスマートフォンの普及台数よりも圧倒的に多い。それだけに、2018年8月の創業当初から、デジタルキーは十分な需要があると踏んでいた」と話す。

写真1 ビットキーの江尻祐樹CEO

 ここでいうデジタルキーとは、スマートフォンやインターネット、Bluetoothなどを活用して玄関の鍵や自動ドアのオートロックを解錠するデジタルテクノロジーを指す。スマートロックやスマートキーとも呼ばれ、徐々に使われ始めている。

スマホ内の情報でサムターンを回す

 ビットキーが最初のデジタルキー製品「bitlock LITE」を発売したのは2019年4月。bitlock LITEは主に住戸(マンションなどの一戸一戸)の玄関ドアでの利用を想定した製品で、内側にあるサムターン(内側から解錠するための円形のつまみ)を動かす小型装置を張り付ける。ドアの外側からスマートフォンを内側の小型装置に近づけると、スマートフォンに保存されている「デジタル鍵」の情報が近距離無線通信で送信され、小型装置がサムターンを回して解錠する。

 同年7月に発売した「bitlock PRO」は、オフィスや貸会議室などの事業用に特化した製品。誰がいつどの部屋に入室できるかといった権限の管理や、実際に誰がいつどの部屋のドアを解錠したかの記録ができるようにした。同時に、マンションのエントランスのオートロックを解錠したり、オフィス入口のフリップゲートを開放したりする「同GATE」も発売した。

 bitlock LITEの利用料は一戸あたり月額300円から。江尻CEOが「価格破壊を起こした」と強調する初期費用不要の月額課金体系が導入の敷居を下げたようで、2020年1月までに12万台を超える受注を獲得したという。

 一方、bitlock PROは1台あたり、同GATEは1ゲートあたり、それぞれ月額2000円から。bitlock GATEは2020年10月時点で「数千棟の導入が決まっており、すでに数百棟への設置を終えた」(江尻CEO)という。2020年内にbitlockシリーズ全体で100万台の受注を視野に入れている。