不動産テックベンチャーのハウスマートが、不動産仲介会社の営業を支援するクラウドサービス「PropoCloud(プロポクラウド)」の提供を開始した。同社が収集した中古不動産情報のなかから、顧客の希望に見合った物件をAI(人工知能)で絞り込んで提案できるようにする。
一般に、1人の営業担当者が勤務時間のほとんどを物件情報の収集や調査などに費やしたとしても提案できるのは月間最大160件ほどだ。それが、このサービスを使うことで月間6000件規模の提案ができるようになる。つまり、業務効率をおよそ38倍に高められるという。
ハウスマートはマンションの購入希望者向けにAI利用の中古マンション提案アプリ「カウル」を提供している。購入と賃貸でのトータルコストの比較、過去の売買実績や最寄り駅から算出した適正価格、35年先までの推定価格など、不動産購入の検討材料になる情報を物件ごとに多面的に提供する点が受け入れられ、提供開始から3年経ち、カウルの会員数は3万人を超えている。
プロポクラウドはカウルで培ってきた技術を、不動産仲介会社向けのサービスにも適用するもの。針山昌幸代表取締役は「テクノロジーを多くの不動産仲介会社に使ってもらえれば、営業担当者は日々の業務に追われる中でも最適な物件を提案できるようになる。それは不動産の購入を検討する全国の顧客の利点にもつながる」と考えた。
紹介可能な物件情報を幅広く収集
中古不動産(マンション、戸建て住宅)は、東京都内だけでも毎日数百件の物件が新規に売り出されるという。一方、顧客が不動産の購入を検討してから購入に至るまで、6カ月から1年程度という長い期間がかかることが珍しくない。
不動産仲介会社の営業担当者には、担当する顧客に対して要望にあった物件を長期間提案し続けることが求められる。だが、現実は多くの場合でそうなっていない。最新の物件情報を網羅的に把握するのが困難なうえ、物件情報を調査して提案するまでに1件あたり60分ほど要するためだ。結果的に、すぐに提案できる「手持ちの物件」を顧客に優先して紹介するケースが増えてしまう。
プロポクラウドは情報収集から提案までを自動的に処理する。まずはインターネットで公開されている販売中の中古マンションの情報を収集し、データの重複を排除する。そのうえで、不動産仲介会社が顧客に提案することが可能な物件だけをデータベースに登録する。その後も販売済みとなった物件を削除するなどの更新を行っており、現在3万件以上の物件情報を保有している(写真1)。