新婚家庭では、料理のメニュー名ではなく「キャベツ」などの食材でレシピを検索している。「忘年会の服装」をネットで検索する件数が、この数年間で3倍に増えている――。
日々大量に発生するデータから、消費者マーケットの「今」を象徴するような傾向や知見が、次々に見つけ出されている。そして、それらを新たな商品やサービスへ結び付けようとする動きが、国内企業の間で着実に広がりつつある。
ひとつのきっかけが、ヤフーが2018年2月に発表した「データフォレスト構想」だ。これは、検索やショッピングなど各種サービスを通じて同社が蓄積してきたデータと、企業や自治体が保有するデータを相互に活用して知見を創出することを目指したもの。これまでの約1年間で約20件の実証実験を推進してきた。その成果を踏まえ2019年秋には、企業や自治体の商品やサービスの開発や改良に役立てる新サービスを始める。川邊健太郎社長は「2019年度中に100社の導入を目指す。日本全体をデータの力で活性化していきたい」と意気込む(写真1)。
写真1 ヤフーの川邊健太郎社長(右)と、チーフデータオフィサーを務める佐々木潔執行役員(左)
検索やショッピングのデータを掛け合わせて旅行の成約率を向上
単一の商品やサービスから得られる“閉じた”データだけに頼るよりも、幅広いデータを掛け合わせて分析したほうが顧客の関心や興味、ニーズをとらえやすい。そのことをヤフーは自社のさまざまなサービスで確かめてきた。
例えば、旅行予約サイト「Yahoo!トラベル」では従来、同サービスの閲覧履歴だけを用いて利用者の関心を分析していた。それを、検索やショッピングのデータも併用して分析するようにしたところ、旅行への関心が高い顧客層を的確に見つけられるようになった。その結果、旅行の案内をメールで配信した際の成約率が「従来の5.8倍に高まった」(佐々木潔執行役員)という。