多数うごめくVUCAの時代のマクロトレンド

 では、なぜ企業自らを変革しなくてはならないのか。

 最近VUCA(ブーカ)という言葉をよく耳にする。VUCAとは過去の延長線で将来を語れない、異次元のスピードで激変する時代を表現した言葉だが、確かに世を見渡せば、企業の将来業績に大きなインパクトを与え得るマクロトレンドが多数存在し、うごめいている。

 例えば、地球環境面では気候変動、資源枯渇、生態系の損失などで、社会・経済面では途上国の人口増加、先進国の少子高齢化、戦争・内戦・政治不安定、自国第一主義・保護主義、米中経済摩擦、DX(デジタルトランスフォーメーション)、リモートワーク・働き方改革、非財務情報の開示要求などである。

 具体例として気候変動を取り上げると、産業革命以前の気温に対して、既に1℃以上上昇している現在、世界中で異常気象が頻発しているのはご存じのことと思う。

 このまま特段の対策をとらないと2030年にも1.5℃、今世紀末には5℃近い気温上昇になる可能性がある。平熱が36.5℃の人が37.5℃になっても何とか働けるが、38℃になったら寝込む。まして41.5℃になったら生死をさまよう状態だ。

 地球を人間に例えるには少々無理があるが、地球も一つの生命体と考えればあながちおかしくもない。パリ協定で決められた通り、気温上昇を2℃未満に抑えられたとしても、その影響は計り知れないと専門家は警鐘を鳴らしている。

 農作物や海洋資源の減収、品質低下、超巨大台風などの頻発による洪水、土砂崩れ、都市の機能低下など大規模災害の発生、熱中症など高温化で働く人々の作業環境悪化、生物多様性の減少などはほんの一例である。

 また、世界人口は2030年には15%ほど増え、85億人に達し、有限な鉱物資源や食糧の奪い合いが始まる。それにより飢餓や貧困の拡大は避けられない。当然、エネルギーの消費量や廃棄物量は増加する。